潜水艦にトナカイ乗務…なぜ? 英潜水艦艦長を悩ませた「ジョークか外交儀礼か」問題

古くから軍艦は、他国との外交の役割も担ってきました。艦長ともなれば相手国にとっては貴賓客になります。そうした背景に、WW2期のなんとも微妙な英ソ関係が加わって起きた、冗談のような本当のお話です。

もしかして酔っていたの? トナカイ乗艦のきっかけは「宴席」

 現地で開催された英ソの協力関係を祝う記念式典の席において、「トライデント」のジェフリー・スレイデン艦長はソ連海軍提督との交流のなかで、イギリスにいる妻が雪で乳母車を押すのに苦労しているという話題を提供しました。ソ連の提督は「それにはトナカイが一番です」と答え、宴席でのジョークかと思いきやその後、本当にトナカイが「トライデント」に贈られます。

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1942年3月19日ドイツ巡洋艦「プリンツ・オイゲン」を攻撃した後、帰港した「トライデント」(画像:帝国戦争博物館/IWM)。

 英米にとって共産主義国ソ連との同盟関係は微妙なもので、外交も複雑な時期でした。あくまでジョークととるべきか、ソ連からの外交儀礼なのか意図を図りかねたスレイデン艦長は悩みますが、結局、英ソ友好の証としてトナカイの乗艦を許可します。とはいうものの人間用のハッチから乗り込むことができず、魚雷搬入口からの乗艦となりました。

 このトナカイはポリャールヌイ基地に因んで「ポリアンナ」と名付けられました。「トライデント」にはポリアンナ用の居住区が設けられ、やがてポリアンナを乗せた「トライデント」は哨戒任務に出航します。

 ポリアンナはなかなか賢かったようで、その6週間の航海中、艦内生活によく馴染み、艦内の号令や合図に反応するようになり、浮上の号令では新鮮な空気を吸うためにハッチへ近寄り、警報では頭を下げて伏せの姿勢をとったそうです。艦のマスコットとして乗組員の一員に認められ、「船乗り猫」ならぬ「潜水艦乗りトナカイ」となります。その間、「トライデント」はドイツ輸送船2隻を沈めています。

チャーチルと「船乗り猫」ブラッキーの有名すぎる1枚

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