「アメリカ半端ねぇ」東京湾のB-29残骸に見る隠れた先進性 いかに技術のカタマリだったか
移送途中で見た巨大タイヤの先進技術
筆者(吉川和篤:軍事ライター/イラストレーター)は、その作業に、東京文化財研究所の研究員の方々と共に立ち会いました。B-29爆撃機の主脚の大きさと重量感に圧倒されながら、全体は錆び付きながらも光り輝くクロームメッキ部分に目を見張りました。また、同時にその横に置かれていた、直径が150cm近くもありそうな大きなタイヤにも目が行きました。
B-29の主脚はダブルホイールです。今回、見つかったタイヤはいずれかの片側で、滑り止めに亀甲型のトレッドパターンが刻まれたものでした。そして、普通は目にすることのない内側も見ることができ、さらに墜落でできたと思われる裂け目には、絡まった細い繊維素材を確認しました。
B-29爆撃機の左右の主脚4本と前輪2本のタイヤには、現在では一般的ながらも、当時は新素材であったナイロン製のコードをタイヤの骨格層に使用したバイアスタイヤが採用されていました。
戦後、我が国でも女性用ストッキングの素材として重宝された化学繊維のナイロンは、戦前の1935(昭和10)年にアメリカのデュポン社で開発されました。実は日本でも1941(昭和16)年には別種のナイロン繊維の開発に成功していましたが、ここまで巨大な航空機用タイヤにその新素材を使って製造する能力は、まだ当時の日本の繊維産業やゴム工業にはありませんでした。
まだ、関西在住時に、機械部品を制作していた社長のエピソードとして、初代社長(明治生まれ・故人)の体験談を聞かされたことがありました。初代社長が、戦時中、陸海軍の戦闘機向けにビスや、ギヤ類を軍需工場で、製作していた時代、大阪大空襲の時に撃墜されたB29やグラマン艦載機などの残骸を調べ、機体を構成している部品のナット、ビス、シャフト、その他エンジンの構成部品の精密な仕上がり具合と、見たこともない研磨の仕上がり具合などを目の当たりにして、アメリカは、こんな飛行機を構成する部品一つにまで、日本とは比較にならないほど精密正確にできているのか?と、、これじゃあ、日本がアメリカに勝てるわけがないなあと、思ったということです。