隠れた戦車王国ウクライナの先走りすぎた戦車T-64 大難航の開発から半世紀

およそ兵器というものは、誰でも使え、故障の少ない堅実なつくりをよしとするものですが、時として新機軸を盛り込んだ野心的なものが生まれます。旧ソ連時代にウクライナで作られたT-64戦車は、輪をかけて斬新すぎるものでした。

斬新すぎて開発難航 最後は見切り発車!

 この新機軸モリモリの野心的すぎる設計案にGABTUは不安を持ちますが、モロゾフ技師の執念に根負けし、将来の技術発展に期待するということで開発を許可します。第2次世界大戦期のドイツにも見られる、技術者の机上の夢を最優先する「技術の暗黒面」に陥る予感がします。

 1960(昭和35)年にオブイエークト430の最初の試作車ができますが、やっぱりトラブル続出でした。特に新開発のエンジンは、戦中戦後に入手したアメリカやドイツのエンジンを参考にして造られたものの、不調に悩まされます。複合装甲も冶金技術の未熟さから品質が一定せず、予感通り「技術の暗黒面」に陥っていました。

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クビンカ戦車博物館に保管されているオブイエークト430(画像:Serguei S. Dukachev、CC BY-SA 3.0〈https://bit.ly/3HEN0Zs〉、via Wikimedia Commons)。

 その間にアメリカがオブイエークト430の100mm砲を上回る105mm砲搭載のM60戦車を完成させ、ソ連は焦ります。そこでGABTUは主砲の口径を115mmに拡大するよう要求し、実用化の目途が立たないオブイエークト430を中止させます。

 GABTUはハリコフ機械製造設計局に対し、より装甲貫通力の高い115mm滑腔砲(砲身に砲弾を回転させるライフリングがない)を搭載する「オブイエークト432」としてプロジェクトを再立ち上げするよう命じるとともに、失敗した場合の保険として、やや性能は劣っても新機軸を盛り込まない安全確実な従来技術で115mm滑腔砲を搭載できる「オブイエークト140」を別の戦車設計局であるウラル車輌工場に発注します。これが後にT-62になります。

 オブイエークト432開発も、前作430と同様に順調には進みません。しかし当時、大きな権力を持っていたウスチノフ国防相も技術の暗黒面に片足を突っ込んでいたようで、「社会主義国ソ連は技術競争でも西側に勝利しなくてはならない」とモロゾフ技師を支持します。このような政治力学も働いて、オブイエークト432は見切り発車のように1966(昭和41)年、T-64として制式化されます。

ウクライナが改良重ねたT-64戦車の最新型「BMブラート」 ほか

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

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