ウクライナを守る泥 日本を守る砂?「天然の障害」防衛にどう生かす ロシア軍は足取られ

ウクライナに通じる侵攻を阻む方法

 こうして見てみると、ウクライナの泥濘によってロシア軍戦闘車両の進撃が遅れているのは、日本防衛という観点から見ても参考になるのではないでしょうか。

 日本はウクライナとは異なり、地続きではなく独立した島国であるものの、ゆえに侵攻を企てる相手国の軍隊は、重車両や主要装備を持ち込もうとした場合、必ず日本のいずれかの場所に上陸しなければなりません。ただでさえ、潮流の激しい外洋やスタックしやすい砂浜は天然の障害となっているのに、これに加えて、前出のとおり打ち捨てられた漁網などの人工物に気をつける必要があるのです。

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北海道の天塩訓練場の砂浜で漁網を履帯に絡ませてしまった陸上自衛隊の水陸両用車AAV7(武若雅哉撮影)。

 ということは、国土を防衛する日本側からすると、専用の障害物だけでなくそれら民生品を組み合わせたハイブリッド障害を作ることで、日本に上陸するハードルをより高くすることができるともいえるでしょう。

 自衛隊やアメリカ軍が日本の海岸に上陸する訓練を行う理由の一つは、侵攻してくる敵の立場に立って、日本に上陸するにはどこから攻めれば良いのか、そして、どんな障害だと敵の進撃を足止めするのに効果的なのかを知るためでもあります。

 こうした訓練で得られた教訓は、自衛隊員を含む日本人が対着上陸作戦を立案・実施する際に、非常に役に立つといえるでしょう。そういった視点で今回のロシア軍によるウクライナ侵攻を見てみると、また違った戦訓が得られそうです。

【了】

【泥にはまってる!】ウクライナ領内に遺棄されたロシア軍戦車ほか

Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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