ウ侵攻中のロシア軍に見られるイタリア製装甲車は何者? 歴史ある戦車大国の屈辱!
失脚した国防相の置き土産はなぜ大量キャンセルされたのか
その後ロシア軍はGPV-2015を再編して「2020年までの国家装備プログラム(GPV-2020)」を策定し、当時の世界的な原油価格の上昇に支えられロシア経済が好転したこともあって、産業界の再編統合が進み近代化は順調に進捗していったとされます。T-14「アルマータ」のような新型戦車も生まれました。
こうなってくると、セルジュコフの置き土産となった「リンクス」の立場はなくなります。ライセンス生産品ですが、主要部品はイタリアだけでなく複数国の製品が使われていました。複合装甲はドイツ製でセラミック材料はオランダ産、エンジンはアメリカ製、ギアボックスはドイツ製といった具合で、これらの国とサプライチェーンを確保しなければなりません。しかも生産コストは国産の同等の小型装甲車「ティーグル」の3倍とされます。1175両分を発注していましたが、セルジュコフ失脚から間もない2013(平成25)年1月にキャンセルされ、調達数は418両に留まりました。
今回のウクライナ侵攻では、本格的な戦闘が本来の任務ではない「リンクス」も最前線に出張って撃破されています。ロシア国内の政治力学のツールにされ、今度はウクライナへの武力行使にも持ち出されたイタリア生まれの「リンクス」は、ロシアの紆余曲折の歴史を体現しているようです。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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