超貴重「明治時代のグリーン車」を見てきた サイズはまるでマッチ箱 座席配置にナルホド
車体の中央にトイレと手洗い所が
ロ481号客車は1933(昭和8)年まで運行されて、引退しました。その間、鉄道省は新造車両を鋼製客車に切り替えており、ボギー台車の大型車両が普及し始めていました。高知線は讃予線(現・予讃線)と接続して丸亀駅方面と直通するようになっており、小型のロ481号では輸送需要に合わなかったのでしょう。
引退したロ481号は、地元の高知県佐川町出身で、警視総監や宮内大臣、陸軍少将などの要職を歴任した田中光顕伯爵により保存されました。佐川町の博物館である「佐川町立青山文庫」に、「寄贈列車閲覧室」として寄贈されたのです。要するに図書館になったということです。
その後、1968(昭和43)年に青山文庫が改築されることが決まると、ロ481号は解体されて香川県の多度津工場に運ばれました。そして1972(昭和47)年の鉄道開業100周年を記念し、2年間かけて復元。なお運搬時は車体だけで足回りはなかったとのことですが、現在はダブルスポーク(松葉スポーク)の車輪が取り付けられています。
前述した通りロ481号は小型の車体ですが、車体中央にはトイレと手洗い所が設置されており、いかにも優等客車らしいところです。車内はロングシートですが、隣の車両への貫通路がないため、妻面にも車体幅いっぱいに、横長のクロスシートが配置されていました。
筆者(安藤昌季:乗りものライター)は許可を得て着席しましたが、奥行きが深い「ソファ」というべき座り心地で、現代の鉄道車両に設置されたロングシートを上回る座り心地だと感じました。もちろん、高性能な衝撃吸収機構など持たない台車ですから、現役時は相当に揺れたと思いますが。
そのようなロ481号は昨2021年、JR四国から佐川町に無償譲渡されました。つまり、53年ぶりの里帰りを果たしたわけです。「ロ481号客車展示施設うえまち駅」と称し、月曜日を除いて見学が可能。車内へ入れるだけでなく、足回りも見られるといいます。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
うむ、(洗面台はあっても)トイレの写真がないようですが…。