「オリエント急行」の超豪華客車がなぜ箱根に? 今でも“乗れる”鉄道界の伝説
「プルマン車」はどのくらい豪華だったか
「No.4158 DE」が製造されたのは1929(昭和4)年のこと。移動手段として、鉄道がまだ航空機に脅かされていなかったころです。日本で同世代なのは、大井川鐡道で活躍するC10形蒸気機関車(1930年製造)ですから、かなりの古参客車といえそうです。「No.4158 DE」は製造後、パリ~ヴァンティミーリア間を結ぶ「コート・ダジュール急行」として活躍し、その後1982(昭和57)年に復活した「オリエント急行」でも使われ、2001(平成13)年まで現役でした。
「No.4158 DE」の座席定員は、4人用個室2室を含み28名。寝台特急「トワイライトエクスプレス」で使われていたラウンジカー・オハ25形(定員24名)より少ないですが、「No.4158 DE」の全長は22.2mで日本の20m車両より長いこともあり、ゆったりしています。座り心地も極上なソファは、クッションに通気性をよくするための「藁」が使われているほか、鋼製の車体でありながら、車内には木材(マホガニー)を使用しており、豪奢なつくりです。
テーブルは移動可能ですが、清掃時は側壁に固定できました。側窓は一部がハンドルを回すと下降するようになっており、別れを惜しむ見送り客にも配慮されていました。暖房は温水暖房ですが、温水ボイラーは石炭式です。なお「オリエント急行」はノスタルジーを大切にしているので、現代の車両でも変わっていないようです。
そのような世界的な豪華車両が、箱根ラリック美術館に展示保存されている理由は、車内の装飾にあります。世界的なガラス工芸士ルネ・ラリックが手がけた156枚のガラスパネルが飾られているのです。
ガラスパネルを詳しく見てみます。人物像と葡萄をかたどったパネルが3枚1組で、人物像は男性2種類、女性6種類。葡萄は3種類が左右対称となっています。パネルは、型の中にガラス素材を流す「型押し」という方法で作られ、表面には白く濁らせる「フロスト加工」が、裏面には水銀を縫って光を反射させる「鏡面加工」がなされています。
天井のランプシェードもラリックの作品ですが、個室内のパネル「花束」は、ラリックの娘スザンヌの作品で、作風が異なります。
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