「オリエント急行」の超豪華客車がなぜ箱根に? 今でも“乗れる”鉄道界の伝説
「オリエント急行’88」として日本国内を運行
この「No.4158 DE」を含む「オリエント急行」は1988(昭和63)年、テレビ局の企画でパリ~東京間を走る「オリエント急行’88」として、はるばる日本にやって来ました。
もちろん海は渡れませんので、香港から船で運ばれ、日立製作所笠戸工場(山口県下松市)で台車変更などの改造を行っています。この際、日本国内の基準に対応するため、たれ流しだったトイレを改造するなどしています。
「No.4158 DE」の車体重量は空車重量で50トンあります。寝台特急に使われた電源車カニ24形500番台でも48.8トンですから、電源車より重かったことになります。また、車両間の連結面には「バッファー」と呼ばれる衝撃緩和装置が備わっているため、車両間の通路は長く、全長だと23.4mあります。車体幅は2.88mでJR車両と同等ですが、日本より線路幅が広い標準軌の車両であることを考えると、スリムな印象です。
パリ~東京間の走行距離は1万5494km。これはギネスブックに「世界最長距離列車」として記載されています。
「オリエント急行’88」はその後、3か月かけて日本全国をクルーズトレインとして走行し、翌1989(平成元)年、船で欧州に帰還しました。その後、「No.4158 DE」は2004(平成16)年に再来日し、箱根ラリック美術館の特別展示「ル・トラン」となって現在に至ります。
「ル・トラン」の見学ではケーキや飲料も提供されます。スイーツを楽しみながら欧州の超豪華客車に思いをはせてもよさそうです。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
コメント