最強戦闘機ながら最後は特攻機にも「疾風」現存唯一機の“ウワサ”吹き飛ぶ 保存状態ヨシ!

現存唯一の「疾風」 詳細調査で文化財指定へ

 知覧特攻平和会館で展示される「疾風」は前述した通り、かつては飛行可能でしたが、知覧町に来るまでの各地での保管状態によって、飛行できなくなってしまいました。ただ以前、噂されていたような移送のために機体を切断したから飛べなくなってしまったわけではありません。

 元々、胴体は前後に分割できる構造になっており、それが目撃者によって勘違いされ流布したことが要因のようです。富士重工業から嵐山美術館へ、さらに白浜御苑へと、「疾風」は国内を転々としたものの、どの移送時でも適切な箇所で分解・組立されており、予想されたほどの劣化はないとのことでした。

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後方上部から見た四式戦闘機「疾風」。翼幅は11.24mあり、一式戦闘機「隼」の10.84mより40cm長い(画像:知覧特攻平和会館)。

 なお、この機体の本格的な調査が2017(平成29)年より行われています。旧軍機の保存修復に長けた専門家の手により機体パネルは慎重に外され、エンジンの気筒内部の調査にはファイバースコープを使うなど、東京文化財研究所の専門家も参加する本格的な調査が、2020年までに5回行われました。その結果、京都嵐山美術館で展示されるようになった1973(昭和48)年以降は静態保存になりましたが、機体の状態はおおむね良好に保たれており、多くのオリジナルのパーツや機体内部の塗装、戦時中の修復箇所なども確認されています。

 これまでの調査内容は2022年3月に保存状態調査報告書として刊行されました。ちなみに、同機は特攻の歴史を伝える貴重な資料として2020年には南九州市の指定文化財(有形文化財歴史資料)にもなっています。

 前出したように、知覧特攻平和会館の四式戦闘機「疾風」は世界で唯一、現存する機体です。戦争の記憶を風化させないだけでなく、当時の日本航空技術がどれぐらいのレベルだったのかを後世に遺すという意味で、同機は貴重な資料といえるでしょう。

【了】

【貴重!】世界唯一「疾風」のエンジン&操縦室の状態ほか

Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「あなたの知らないイタリア軍」「日本の英国戦車写真集」など。

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コメント

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3件のコメント

  1. 最低
    広告しか無いやん

  2. 嵐山美術館から白浜そして特攻平和会館時分解組み立てをやりました。。
    気を使い、防錆処理もきっちりやり 思いを込めて担当した思い出があります。

  3. 複雑なエンジンを搭載した疾風は製造・整備が難しく、日本が劣勢になって工業力が低下してくると不調に悩まされ、飛ぶ事も難しくなっていたとか。素の性能がいいだけに残念。
    それでも、日本の戦闘機では一番好きな機体です。