60年前の大型“3軸”レトロバス復活!「三菱MR430」のべ千人で奇跡の復元 加速いいぞ…!

車体のリベット3000本打ち直し 困難極めた復元

 ところが、この復元作業は困難の連続であったといいます。関連工場に運ばれたバスは、見た目で使えそうな部品とそうでない部品を選別したのち、腐食した部品を取り外し、車軸などを調整。その後、本格的な復元作業を実施するために、すべての外板と内装を取り外して高圧洗浄機で清掃しますが、設計図がないため、腐食したフレームは実際に切断して採寸し、新しい鉄材で復元しました。

 外板は、屋根と後部の一部を除いて新たに作り直しています。車体に打ち込むリベット約3000本の打ち直しも実施しました。車両部品も現在流通しているものがほとんどないため、整備工場の取引各社が試行錯誤しながら製作。規格が小さく製造されていないつり革を3Dプリンターで再現したり、取り外されていたミラーや降車ボタンなど製造できない入手困難な部品を道内各地の方から譲ってもらったりと、困難を次々に解決していきます。

 一方でエンジンは、40年以上も手付かずの状況でありながらもコンディションが悪くなかったのが幸いしました。2021年12月には単体始動に成功。補修部品が入手できないため、オーバーホールは断念し、可能な限りの洗浄や調整、再塗装にとどめました。

 加えて、走行の肝でありながらも入手に難儀していたパワステポンプは、道東地方にある三菱MR450の廃車体に付いていたものを特段加工することなく流用できることが判明。さらに、腐食がひどく発見が到底不可能と思われたフレーム打刻を執念で見つけ出す(打刻が確認できなければ車検が取れない)など、いくつかの奇跡がありました。

Large adk mr430 ceremony 06

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復元を記念したセレモニーが旭川電気軌道の車庫で行われた(須田浩司撮影)。

 こうして困難と奇跡が重なった約1年にわたるMR430の復元作業は、2022年9月に完了。そして2022年9月27日、旭川運輸支局で無事に車検を通過し、ナンバープレート交付となったのです。

 ちなみに、今回の復元作業に協力した企業は約15社、整備に携わった延べ人数は約1000人、レストアにかかった時間は約8000時間(1日8時間労働で計算)。多くの協力と、復元に携わった方々の技術、そして熱意が合わさってこそ実現したといえましょう。

【全貌】奇跡の復活を遂げた大型3軸レトロバス(写真ギャラリー)

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