動く「1等展望車」京都鉄道博物館マイテ49形に乗る 戦前の最上級車 圧巻の風格!
車内はどんな様子?
1等室は1人掛けの回転式ソファが12脚置かれた空間です。ソファは、座席幅43~50cm、肘掛け幅10cm、奥行54cmとゆったりしています。包み込まれるような座り心地は極上で、要人を乗せた特別車両であることが伝わります。マイテ49形の「復刻車両」として、2017年にオロテ35形が「SLやまぐち」用として登場しましたが、形が似た展望席であれ、座り心地ではオリジナルが勝る印象です。
続いて向い合せ座席が2組置かれたスペースへ。座席間隔196cm、座席幅87cm、肘掛けの幅9cmで、この部分のみ背もたれは堅め。オロテ35形にも類似スペースがありますが、こちらの座り心地は「完全再現」といえます。
現役時代はグループ客向けや歓談場所として使われており、奥行59cm、幅48.5cmの大型テーブルもセットされています。なおボックスシートは4人用ではなく、2人用。1等車らしい贅沢さです。
最後は展望室へ。1人掛けソファが7脚、2人掛けソファが2脚置かれています。座席自体は1等室に似ていますが、座り心地ではこちらがやや上。照明も凝った灯具で、贅沢感があります。車両の最大の特徴であるベランダのような解放された展望デッキは、客室からガラス戸で仕切られています。
このデッキは現役時代、要人が列車の出発時に挨拶するための場所だったようで、運行中に展望デッキへ出るような乗客はまれでした。1987(昭和62)年に展望デッキの柵がかさ上げされたため、やや視界が悪いです。もし静態保存のみとするなら、原型復帰してほしい部分ではあります。
「特別なスチーム号」が汽笛と共に動き出しました。戦前の優等客車は、車輪がひとつの台車に6つ装着された「3軸ボギー台車」を装備しており、揺れ方がゆったりしています。
施設内のため、乗車時間はわずか10分。ただ、今後は運行しないとのことで、筆者はやや残念に思いました。蒸気機関車に牽引させ、例えばクルーズトレイン「トワイライトエクスプレス瑞風」の乗客向けに「ありし日の1等車体験」を開催すれば、喜ばれるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
運よくチケットが取れて乗車してきました。
交通科学館保存時に何度か車内公開の時に入った程度で、復活後は乗車機会が無く、ようやく最後の動態での乗車が叶いました。
おっしゃる通り、静態ではなく、時々「特別な-」で動かして欲しいものです。