輸送船が秒で真っ二つ 米軍テスト中の新たな対艦用兵器の凄み 標的に“当ててない”!?

アメリカ空軍は2022年現在、対艦戦攻撃用の新兵器を開発中です。「クイック・シンク」と呼ばれるその兵器、既存のミサイルや魚雷、爆弾とは何が違うのか、元航空自衛官にも話を聞いてきました。

対艦新兵器「クイック・シンク」の欠点

 アメリカ空軍が発表した写真によると、「クイック・シンク」は高性能な戦闘爆撃機F-15E「ストライクイーグル」に搭載されていました。ただ4発ほど搭載すると、機動性が著しく低下するため、敵側が対空ミサイルなどで反撃をしてきた場合、回避飛行は鈍重なものになるでしょう。

 また、滑空して飛行するJDAMをベースにしているため、長距離の目標を攻撃するには高高度から投弾する必要がありますが、これも敵側の防空網に迎撃されやすくなることを意味します。

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F-15E「ストライクイーグル」に搭載された「クイック・シンク」。左右の2発ずつ計4発が搭載されている(画像:アメリカ空軍)。

 前出のhalt氏は次のようにも話しています。

「技術的なことを言えば、目標への誘導は電波や赤外線、レーザーによるものなのか詳細が気になります。対艦ミサイルは、レーダーや赤外線画像などで艦艇を捉えるか電波の発信源に向けミサイルを誘導して命中させます。しかし、『クイック・シンク』のベースとなっているJDAMは、GPSと慣性航法装置を持ち、指定する位置座標に向け誘導されるもののため、艦艇のような移動する目標には命中させることは極めて難しいのです。

 一方、レーザーによる目標指示を行うレーザーJDAMであれば移動目標への攻撃が可能です。そのため、この『クイック・シンク』もそれに類似した誘導装置が使われていると推察されます」。

 GPSとレーザー誘導を併用したレーザーJDAMは車両程度の小型目標でも移動中に攻撃することが可能です。しかし、レーザー誘導をする場合は、目標上空から航空機や洋上の艦艇などからのレーザーを使った目標指示が必要になりますが、相手が対空・対艦ミサイルや火砲で武装防御された軍艦に対しては目標指示を行うのは非常に危険な行為といえます。

 これらを踏まえると、「クイック・シンク」も万能の対艦兵器ではないといえるでしょう。1撃で艦艇を沈める威力を持ってはいるものの、反撃が予想される敵側の勢力下では運用が制約されるようです。しかも、現段階では開発中の兵器であり、その位置付けは海軍と共同で行われている共同能力技術実証というレベルであるため、今後、別の形で開発内容が変化する可能性も大いに含んでいます。

 とはいえ、JDAMベースの爆弾であれば、価格が安いだけでなく、アメリカ軍が運用するほぼ全ての戦闘機に搭載することができる(母機側のソフトウェア改修は必要と推測)ことから、採用されれば、それは同時に艦艇への強力な攻撃能力を持つことを意味します。

「クイック・シンク」は全く新しいものではなく、既存の技術を中心に組み合わせて新しい用途へと転用した兵器であり、それ故に開発すればその配備はスムーズに進むでしょう。もしかしたら、アメリカ軍と高い相互運用性(インターオペラビリティ)を有する自衛隊も、採用するかもしれません。

【了】

【画像】対艦新兵器「クイック・シンク」のアップ&海中に没した標的の輸送船ほか

Writer:

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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