輸送船が秒で真っ二つ 米軍テスト中の新たな対艦用兵器の凄み 標的に“当ててない”!?
元自衛官が語る「クイック・シンク」の威力
この仕組み、実は現代の魚雷の弾頭と同じものだといえます。現代戦における雷撃は艦艇に直撃しなくとも沈める威力を持っています。その理由は、艦底至近で爆発することで、上述したような効力を発揮するようにプログラムし爆発させることが可能だからです。
近年の具体例でいえば、2010(平成22)年3月に起きた韓国哨戒艇沈没事件が挙げられるでしょう。沈没した哨戒艦「天安(チョナン)」は、後に引き揚げられましたが、船体は二つに切断されていました。
ただ、ここまで高性能化した魚雷は、ゆえに極めて高価な兵器になっています。たとえばアメリカ製MK48魚雷の価格は1発380万ドル(約5憶5377万円)とか。なお、それを使用する潜水艦も、機動性という点では航空機とは比べものになりません。
「クイック・シンク」はそのデメリットを解消するために開発されている兵器であり、JDAMを流用することで導入コストを下げ、戦闘機から投下することで潜水艦と魚雷の組み合わせよりも素早く長距離の攻撃が可能となります。
こうして見てみると、「クイック・シンク」は既存の対艦兵器と比べ、安くて強力な良いこと尽くめの新兵器といえそうです。しかし、さまざまな兵器やプラットフォームが入り乱れる現代の海戦では、物事はそう単純ではありません。
「クイック・シンク」の問題点について、航空自衛隊で装備品開発にも関わっていた元自衛官のhalt氏が、次のようにコメントしてくれました。
「バブルジェット効果で軍艦を沈めるのは、対艦ミサイルと比べて破壊力としては強大だと思います。軍艦含め船というものは、一か所に大きな力がかかり急激に持ち上げられた場合、その形状を保つほど強固には作られていません。ただ攻撃する側の戦闘機についても、2000ポンドという重量の兵器を搭載すると、機動性が大きく制限されてしまい、本来の軽快な動きができなくなります。つまり、重い物を積んだ機体は素早く動けず、迎撃されやすくなってしまうのです」
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