『トップガン』でマーヴェリックらを翻弄! A-4「スカイホーク」なぜ70年近く現役バリバリ?

性能向上型が非公式に「マングース」と呼ばれたワケ

 スカイホークは、生産中にも改良が続けられ、特に搭載しているプラット・アンド・ホイットニーJ52系エンジンは随時、出力向上が行われた結果、初期生産モデルと後期生産モデルでは、ダッシュ力や兵装搭載量にかなりの向上が生じています。

 だからこそ、映画『トップガン』で一躍名が知られるようになったアメリカ海軍戦闘機兵器学校(当時)、通称「トップガン・スクール」でも、旧ソ連製戦闘機の飛行性能を模した仮想敵機「ミグ・シミュレーター」として使われていたのです。同校では、後期型のA-4Eもしくは-Fをベースに、機体背面にコブのように飛び出ているアビオニクスパックや、主翼の20mm機関砲を撤去し、出力向上型のJ52系エンジンに換装した独自のアップグレード型を運用していました。

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ブラジル海軍のA-4「スカイホーク」。同軍ではAF-1という名称で運用されている(画像:ブラジル海軍)。

 このアップグレード計画は通称「マングース改修」といいますが、ゆえに能力向上を果たしたA-4E/Fは、「スカイホーク」ではなく非公式には「マングース」とも呼ばれたようです。そしてこの改修のおかげで、A-4E/Fは『トップガン』の劇中さながらに戦闘機と比肩するほどの機動性や加速性を獲得。運動性に優れた軽戦闘機MiG-17のシミュレーター役として重用されたのです。

 とはいえ、さすがに1990年代後半にもなると性能的に陳腐化するようになったため、2003年をもってアメリカ海軍から完全退役しています。しかし、2022年現在も航空系の民間軍事企業ドラケン・インターナショナルが、元ニュージーランド空軍のA-4K/Nを入手してMiGシミュレーター役のみならず、各種の訓練支援に飛ばしているほか、アルゼンチンとブラジルの南米2か国はまだ現役で運用しており、ブラジルについては2025年まで第一線で使うと明言しています。

 マングースといえば、相手が危険な毒蛇でも果敢に立ち向かって捕食してしまうほどの小さなラフ・ファイター。A-4「スカイホーク」が初飛行したのは1954(昭和29)年6月22日なので、ブラジル軍が計画どおり運用するなら、「トムキャット殺しのマングース」の「兄弟」が70歳の「古希」を迎えることは間違いなさそうです。

【了】

【写真】トップガン・スクール&「ブルーエンジェルス」カラーのA-4「スカイホーク」

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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