あわや人類滅亡「キューバ危機」60年 核戦争はどう回避されたのか 背景に2種の米偵察機

今から60年前の1962年晩秋、世界は全面核戦争に突入する一歩手前に陥りました。後に「キューバ危機」と呼ばれるようになったこの事件に終止符を打ったのは、2種類の偵察機が持ち帰った画像情報。本事件の一連の流れを振り返ります。

RF-8Gが持ち帰った「証拠写真」で戦争回避へ

 際どい偵察飛行は10月23日から11月15日までほぼ毎日、午前と午後の複数回行われていましたが、そのさなかの10月27日には、キューバ上空でU-2偵察機が地対空ミサイルによって撃墜され、パイロットが死亡する事態が発生します。これにより米ソ間の緊張は極度に高まったため、この日だけで「ブルームーン」ミッションは14回も行われたとか。最終的に、3週間あまりのあいだにRF-8だけで解像度の高い写真をトータルで16万枚も撮影したといいます。

 こうして、当初はキューバにおけるミサイルの存在を認めなかったソ連の国連大使も、国連安全保障理事会の場にアメリカ側から鮮明な写真が提出されると反論できなくなりました。その後、米ソのあいだで合意が成立、キューバからミサイルが撤去され、イリューシンIl-28爆撃機も撤退するのと引き換えに、アメリカもトルコから弾道ミサイルを撤去するという取引が行われたことで、核戦争はギリギリで回避され、極度の緊張は解けるに至ったのです。

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1984年8月11日、旧モフェットフィールド海軍航空基地で展示されたNASAのU-2C。この機体はU-2Bとして製造された後に、胴体背部に電子機器を搭載するための改装が施された機体で、1971年にNASAに引き渡された2機のうちの1機(細谷泰正撮影)。

 とはいえ、その後もアメリカ側は合意が確実に守られているか検証するために、キューバ上空の偵察飛行を定期的に行っています。なお、この検証飛行には搭載カメラの問題を解決した空軍のRF-101Aも用いられました。

「キューバ危機」において西側全体の目の役割を演じた高高度偵察機、U-2はその後も改良と再生産が行われ、現在では第三世代に相当するU-2Sがアメリカ空軍で使用されています。

 そして、もう1つの立役者RF-8Aはその後、エンジンや電子機器をより新しいものに換装し、同時に機体構造の主要部分を強化する近代化改造が行われ、RF-8Gの名で1987(昭和62)年まで使用されました。

 戦略情報の収集は国家の存亡を左右する極めて重要な活動です。だからこそ、前出したように「キューバ危機」では、尊いパイロットの命を懸けてでも偵察飛行が行われたといえるでしょう。こうしたミッションは現在、偵察衛星や「グローバルホーク」などの無人航空機(UAV)が担うように変化しています。

 とはいえ、U-2はお役御免になったわけではありません。アメリカ空軍では同機が有人である特徴を活かして、前線背後などの特定地域の情報収集という任務に用いています。しかし、この分野の無人化も現実性を帯びてきていることから、筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)はU-2が最後の有人偵察機になるのではないかと予想しています。

【了】

【写真】主翼に着氷跡も 空飛ぶU-2偵察機ほか

Writer:

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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