謎多き「クーゲルパンツァー」の本当に謎な話 存在自体が信じがたいその正体に迫る

仮説 「クーゲルパンツァー」は「装甲オートバイ」という発想か?

 第1次世界大戦でひとり乗り戦車がフランス陸軍で不採用になり、やがて戦車が発明され、さらにその後になって現れたとされる「クーゲルパンツァー」は、時期的に見ても全く場違いです。

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「クーゲルパンツァー」後部。三輪車形式だと分かる(画像:Alf van Beem、Public domain、via Wikimedia Commons)。

 筆者(月刊パンツァー編集部)は、偵察用の装甲オートバイの発想でつくられたのではないかと想像します。武装は無くとも無線機を搭載していたというのがポイントです。

 第2次世界大戦の緒戦で、ドイツ軍は戦車や装甲車、急降下爆撃機などを駆使して「電撃戦」を行いました。派手な戦車部隊の影に隠れてしまいがちですが、オートバイも機敏性を発揮し、敵戦線深くに侵入しての偵察活動や連絡に活用されました。正確な情報なくして「電撃戦」は成立せず、その役割は重要なものです。しかしオートバイは無防備で脆弱です。

 そこで、ドイツのある技術者が「装甲オートバイ」を思いつく、という筋書きです。ある程度の防御力をもった偵察、連絡手段としては小型4輪装甲車が適任と思うのが普通ですが、彼ないし彼女は、オートバイは自動車より機敏に動けるはずというアイデアにこだわってしまいました。机上のアイデア先行で開発自体が目的となり、使い物になるかどうかは忘れてしまう、というのは技術者がよく陥る、俗にいう「暗黒面」です。

「クーゲルパンツァー」は、ある技術者が思いついて試作品まで作りましたが、軍にも提案できないような失敗作だったところ、終戦後ドイツの優れた先進技術の捜索に必死だったソ連軍のある兵士がこの異形を発見し、「ドイツの新兵器を見つけました!」と勇んで提出した――などといったジョークみたいなオチかもしれません。もっとも、満州で鹵獲されたというストーリーにつなげるには、もうひとひねり必要になりそうです。

【了】

【写真】これで機関銃の前に出たくはないな…仏製「転がる盾」のインテリア

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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