なぜ鶴見駅に東海道線が停まらなくなったのか 150年の日本最古級駅「せめて相鉄直通を…」

では横須賀線や相鉄直通線は停車可能か

 その理由は車両の加速力です。電車は発進から停車まで機敏に動け、短い駅間に適しています。しかし汽車(蒸気機関車)はスピードが上がるまで時間がかかります。短い駅間で発車と停車を繰り返すよりも、長い駅間を走らせた方がいいというわけです。

 加えて鶴見駅は開業以来、乗客が少なかったので、長距離列車は停めずに京浜電鉄への対抗心も込めて、近距離移動に便利な電車を停めた方がいいという判断もあったでしょう。

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鶴見駅はJR鶴見線も発着する。プラットホームは高架だ(2022年12月、杉山淳一撮影)。

 そんなこんなで、鶴見駅は東海道本線の列車に通過されてしまいました。ところで鶴見区には「鶴見駅中距離電車停車等推進期成会」という市民団体があり、JR東日本に対してプラットホームの設置要望活動を行っています。主に「JR・相鉄直通線」用を設置して欲しいとのこと。横浜市が算出した概算工事費は180億~200億円で、費用便益比は1.6以上と有望です。しかし実現可能性は低いと思われます。

 鶴見駅は既出の路線のほかに、横須賀線や鶴見線、東海道本線の貨物支線である品鶴線や武蔵野線、羽沢線などが通っており、配線図を見ると非常に複雑な形状です。もはやプラットホームを増設する余裕はなく、仮に設置できたとしても、貨物列車とのダイヤ調整も難航するでしょう。

 地下駅を設ければ貨物線の機能は維持できますが、費用がかさむこと必至です。ならば高架ホームとしたいところですが、すでに鶴見線の高架線がほかの線路を横切っているため、これより高いところに設ける必要があります。

 名称だけを見れば、日本初の鉄道路線「東海道本線」の駅なのに東海道線の列車が停車しないというのは珍妙ですが、この状態に110年ほどの歴史があるのもまた事実なのです。

【了】

【相鉄直通ホームは実現するか】複雑な鶴見駅の構内配線図

Writer: 杉山淳一(鉄道ライター)

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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コメント

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3件のコメント

  1. >地下駅を設ければ貨物線の機能は維持できますが、費用がかさむこと必至です。ならば高架ホームとしたいところ

    1)地下駅を設けるには駅北側の鶴見川の橋の南から地下線を作るのか、川崎駅以南で降下を始め鶴見川をトンネルでくぐるのかの問題がある。
    2)高架駅化するには南側の鶴見線だけなく北側に品鶴線(鶴見川北詰)と南部貨物線(京急八丁畷駅西側)のオーバークロスをどうするのかの問題もある。

    • 通過する東海道線だけを地下化(駅を設けないことが前提)して、空いた土地を活用して高架化やホーム増設したほうが良いかなと思いますよ。
      地下化は駅を設けるか否かで建設費に大きな差が出ますので。

  2. 無難なのは、鶴見川手前の横須賀線・品鶴線が分岐するあたりから花月園総持寺あたりまでの区間の東海道線の地下化。
    理由として、この区間には踏切がないのとJRの敷地が広いため。

    そうすれば、東海道線の複線分の約7メートルの敷地が出来ます。
    それと同時に鶴見駅構内の貨物中線3線の1線化。
    ここで、機関車の機廻しが実際定期的に行われていますが、3線フルに使用されているのは見たことがありません。

    そうすることにより、蒲田や桜木町のように2面3線の島式ホームの設置が可能になると思います。

    中線1線設置すれば、貨物列車の機廻しは今まで通り可能ですし、埼京線相鉄直通線にトラブルが発生しても鶴見折り返しが可能です。
    設置するホームを15輛対応にすれば、横須賀線横浜以南のトラブル時に総武快速線の折返しに使えます。