「ステルス戦闘ヘリ」は米軍の無謀な夢だったか 初飛行30年 性能・予算もマシマシの結果は?

「コマンチ」採用したら他機が買えない…

 アメリカ会計検査院が1999年に発表したレポートによれば、現状のまま生産まで進めた場合、「RAH-66関連予算はアメリカ陸軍の航空関連年間予算の約6割まで増大する」と予想されており、開発計画自体も「コスト超過、スケジュールの遅延、パフォーマンスの低下という重大なリスクがあり、主要技術が成熟して機体に統合・試験される前に製品開発を進めようとしている」と指摘されています。ステルスヘリコプターという技術的なハードルの高さだけでなく、開発計画そのものにも問題があったといえるでしょう。

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胴体下部にあるウエポンベイ。ミサイルやロケットなどの兵装はこの中に収められる(布留川司撮影)。

 当初の予定ではアメリカ陸軍が運用している攻撃ヘリAH-1「コブラ」と偵察ヘリOH-58「カイオワ」を更新するために1200機以上のRAH-66が生産されるはずでした。しかし、開発の遅延とアメリカ陸軍側の要求の変化によって2002年までに6回も開発計画の見直しが行われ、その生産予定数も650機まで減少。それでも、必要性に疑問符が付いたことから、最終的には2004年2月23日に開発計画そのものが正式にキャンセルされています。結果、開発期間は約20年、計画全体に注ぎ込まれた予算は約70億ドル(約9177億円)以上と言われています。

 巨額の予算が注ぎ込まれたにも関わらず、たった2機の試作機のみで終わったRAH-66「コマンチ」の開発計画。一般的には大失敗に分類されますが、その開発にはボーイング社とシコルスキー社だけでなく、全米の多くの防衛産業が関わっており、開発過程で得たノウハウはその後始まったほかの新型機開発に生かされたとも。ゆえに、その計画自体がまったくの無駄というワケではないようです。

 ちなみに、役目を終えたRAH-66の試作機は、2023年現在、アラバマ州のフォート・ラッカー陸軍基地にある博物館に収蔵されています。博物館内の展示スペースの関係で常設展示はされていませんが、タイミングさえ合えば、いまでもその姿を見ることができます。

【了】

【写真】操縦席アップも RAH-66「コマンチ」のディテール

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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コメント

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2件のコメント

  1. コマンチはコマンチを開発しようとしたから駄目になったと思う。OH-58D/AVX案のような、複合ヘリにしちゃってたら、もっと早く複合ヘリが出来てたんでは?ステルスという、UH-60改で特殊作戦やってもNH-90である程度できる様な事にあーでもないこーでもないをやるから…

  2. 正面から見るとコマネチのように見えるからですか?