「歩兵戦闘車」はどこへ行く? 各国で失敗続きの次世代歩兵戦闘車開発 独英米の現状

戦車に随伴する歩兵を運び、ある程度の戦闘もこなす「歩兵戦闘車」の次世代車両開発がドイツ、イギリス、アメリカで進められていますが、各国とも足並みを揃えたように捗っていません。それぞれの現状などをまとめました。

軍の要求にメーカー辟易? アメリカ「OMFV」の難航

 アメリカでもM2「ブラッドレー」歩兵戦闘車の後継開発が難航しています。

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アメリカ陸軍のM2ブラッドレー歩兵戦闘車(画像:アメリカ陸軍)。

 アメリカ陸軍は「OMFV」(任意人員配置戦闘車)という、マルチドメイン作戦に対応できるようネットワーク通信力を強化して、無人戦闘車、降車した歩兵、ドローン、さらには艦艇や航空機に接続する、戦場ネットワークのノードや端末となる野心的なコンセプトの新型車両を企画しました。

 陸軍は当初「OMFV」の就役を2035年と予定していましたが、2026年に前倒ししようとします。これに対し3社が応札を表明していたものの、途中辞退や納期遅れによる失格で事実上、入札は破綻します。高すぎる要求と早すぎる納期、限られた予算でプレッシャーが強すぎ、メーカーがモチベーションを失ったのが要因のひとつといわれます。

 陸軍は2026年に配備することを諦め、2021年2月7日に「低プレッシャー、低コスト」を掲げて「ゆるい」アプローチを改めて発表しました。これに5社が応募して現在、競作中です。2023年度第2四半期に最大3社が選定されて次のフェーズの契約を締結し、2027年に1社を選定、フルレート生産の決定は2029予算年度が予定されています。

 OMFVの完成形は一向にイメージできず、完成しても結局、M2より少し性能が向上しただけの凡庸な装甲車になる可能性も指摘されている現状に、現場の熱量は高くありません。M2を改修してズルズルと使い続ける可能性もあります。

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TOW対戦車ミサイルを発射するM2ブラッドレー歩兵戦闘車(画像:アメリカ陸軍)。

 2022年2月24日まで、21世紀の戦争はハイテクを駆使した新しい戦い方が主流になると信じられ、各国はそれに備えて多くの財と労力を投入してきました。しかし、ウクライナの戦闘の様相は、想定されていたものとはちょっと違うようです。無人機や衛星回線を通じたネットワークなどハイテクは使われていますが、20世紀と変わらないレガシーな兵器が威力を発揮しています。

 実のところ世界は、21世紀の戦争の様相を買いかぶりすぎていたのかもしれません。実相が分かるには時間がかかりそうです。

【了】

※一部修正しました(1月23日10時57分)。

【画像】バラエティ豊か アメリカの「次世代歩兵戦闘車」イメージ図を見る

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

4件のコメント

  1. ロシアが、BMPやBTRシリーズを使い続ける理由も、同じかな

  2. エイジャックスの35億ポンドは55億円ではなく5500億円ではないでしょうか。

    • ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。

  3. >>「歩兵を運んで戦える装甲車」

    この文字列の中で歩兵戦闘車が求められていたのは「戦える」という部分です。

    BMPシリーズが配備される前のソビエト軍には、BTR-40やBTR-152といった装甲兵員輸送車が配備されており、上記の2車種にはガンポートが備えられていたので搭乗した歩兵が射撃を行う事も可能であり、両車両ともに水上航行も可能でした。特にBTR-152は、BMPシリーズが配備された後もソ連軍の正式装備であり続けソ連軍から退役したのは90年代に入ってからです、と、このように既にBMPよりも安価で大量に配備可能な装甲兵員輸送車がありましたが、この車両はあくまでも戦場まで兵士を輸送する車両であって戦車と共同で戦闘を行うには脆弱な事はソ連軍も理解していたようです。核戦争及び核兵器使用下での戦場では両車両は戦力になりえないという事が判っていましたので、BTRシリーズはその後BTR-60で密閉型になりBTR-70ではNBC防護装置を装備したり発展している、西側に目を向けると、既にベトナム戦時にアメリカ軍は密閉型のM113が登場しており核戦争下でも兵士を戦場へ送り届ける装甲兵員輸送車としての役割を担っていました。アメリカを中心とした西側諸国の装甲兵員輸送車に戦場で対峙した場合、BTR-152やBTR-40では明らかに攻撃力不足でありこれらの装甲兵員輸送車を戦場で排除するために「戦う」事ができる装甲兵員輸送車を求めた帰結が装甲戦闘車両と言う事がいえるのではないでしょうか。(敵戦車に対しては主力戦車が対応するので)

    兵士を運ぶ装甲車であれば、BTR-152が長くソ連軍で現役であったことからもBMPシリーズでなくともよかった事が伺えます。

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