東京駅ホームにあった「妙に古い柱」は巨大ターミナルの100年を知っていた
2014年、屋根の大改装でお役御免に
その後も何回か、ホーム屋根柱を見学に訪れました。じっくり観察するため、なるべく乗降客の少ない日中を狙ってホームへ行きましたが、さすが東京駅、人が絶えません。通行人の邪魔にならないよう、山手線の発着の合間を狙いましたが、柱の根本部分や上側の装飾箇所をマジマジと眺めていると、「この人は柱に向かって何をしているのか」と、通行人に訝しげな表情を向けられたものです。一般的には単なる柱にすぎず、存在も当たり前すぎたということでしょうか。
奇跡的に開業時の姿のまま残されたホーム屋根柱。大変化が起きるのは、冒頭で述べた通り東京駅開業100周年を迎えた2014年のことです。この年、5・6番ホームでは屋根の大改装を実施することとなり、100年あまり活躍してきた柱もついに撤去されることとなったのです。素人目にはまだ使えそうに思えて残念でしたが、戦後復旧した木製屋根は波打っており、そろそろ寿命だったのでしょう。
1908年の建設時に設置された柱は、一対2本が同じホームにモニュメント保存されています。その下部には「明治41年」と刻印があり、たしかにこれらの柱が東京駅の建設と共に歩んできたのだと再認識させられました。柱は今もひっそりと有楽町寄りに佇んでいます。なお2023年2月上旬時点では、ホーム改良工事のため一時的に仮囲いが設置されており、見学できないので注意が必要です。再び見学できる日を待ちましょう。
【了】
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。
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