沈んだままの造船立国ニッポン 苦境の国内2位JMU 最大手と提携で浮上できるか
「オーナー系造船所」と手を組み危機打開なるか
こうした中、JMUは舞鶴事業所での新造船建造撤退と、オーナー企業である今治造船との資本業務提携に踏み切ります。
2021年1月にはJMUと今治造船による商船営業・設計の合弁会社「日本シップヤード(NSY)」が設立。JMUは商船事業においては、純粋に船体の建造に集中できるようになりました。併せて各事業所へ効率的に新造船を振り分けて、どこでも同じ品質で建造できるよう、標準・基準類の統一を進めています。
千葉社長は「(2018年に比べて)造船業界の状況が大きく変わってきた。その中で今治造船と資本業務提携するのがベストな形という決断に至った。日本の造船業を発展させていくため、総合重工系の造船所とオーナー系の造船所がどのように手を組んで協力していくのかが重要な点なのでは」と話しました。
艦船事業では予定していた3900トン型護衛艦(FFM)の受注を逃し、磯子工場での建造期間が開いてしまったものの、「なんとか耐え忍んで、哨戒艦の主契約者に指名してもらうことが出来た」と述べています。
新社長となる灘氏は、「覇権主義国家による安全保障問題、エネルギー不安や物価高、資源の確保といった大きな問題が急速に起きてきた時代は少ない。これから起きる変化に対応し、付加価値の高い船舶、対応商品を安定して供給していくことが存在意義だと思っている」と意気込んでいました。
ただ、世界的にも、造船業の先行きは厳しいものがあります。例えばLNG船を安定的に受注している韓国の大宇造船海洋も自力での経営が立ち行かなくなり、現代重工業との合併を目指したものの計画がとん挫。韓国財閥のハンファグループに買収されることになりました。日本でも、「水上艦の建造は1社に絞るべき」との考えが造船関係者のあいだに存在し、さらなる再編・集約が進む可能性があります。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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