高速バス「待機場所どうする」問題 減っていく駐車スペース 休憩確保にあの手この手
高速バスは運行を終えると、次の運行まで待機したり休憩を取ったりする必要がありますが、その場所の確保に事業者が苦心しています。都心部の開発で駐車スペースが減少しているため。バス運行の裏で起きている現象を探ります。
月ぎめ駐車場も減っていく トラックの車庫間借りも
以前は起点側と終点側の事業者による共同運行がほとんどであった高速バスですが、近年、制度改正などにより単独運行の事例が増えています。特に後発参入の事業者は、車両待機のため月ぎめ駐車場を契約するケースがほとんどです。
ところが近年、首都圏や京阪神では、マンションなどを建設するため、オーナーが駐車場を閉鎖するケースが増えています。そのため、待機場所の移転を余儀なくされることもあります。都市高速の高架下にある月ぎめ駐車場のように、他の用途へ転用される心配が小さい物件は人気も高く、いつ問い合わせても「あいにく大型車用の枠は満車」という回答です。
珍しいところでは、琴平バス(香川県)や海部観光(徳島県)らは、東京に到着後、資本関係のある運送会社(トラック)の営業所に入ります。なお、これらは1~2台の規模ですが、弘南バス(青森県)の場合、老舗事業者ながら、首都圏方面へ多数の便を単独で運行しています。そのうち1台は、かつて共同運行していた京浜急行バスの営業所に入庫するものの、残りはすべて埼玉県内にある駐車場に入ります。現在はコロナ禍の影響で便数を絞っていますが、最大で7台まで入るこの駐車場。同社のレトロな車両カラーも相まって、さながら「埼玉県にある津軽」の様相を呈しています。
今後、東京駅前できたバスターミナル東京八重洲の第2期(2025年度)、第3期(28年度)開業や、浜松町バスターミナルの再開業(27年度)などにより、東京都心のバスターミナル内に待機バースが増える見込みです。短距離路線は、ターミナル内で待機できれば乗務員の労働環境は改善される上、会社から見ても人件費の削減につながるので、そのような事例は増えるでしょう。一方の中・長距離路線では、乗務員の休憩場所や仮眠室の確保を考えると都心のターミナル内待機は現実的ではなく、駐車場探しの苦労はしばらく続きそうです。
【了】
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。
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