レーダー× 無線も×「闇夜に無言でステルス機へ空中給油」の神業 イラク戦争20年 元米軍兵振り返る
出撃回数からわかる空中給油機の重要性
こうして、フィル氏が乗るKC-135は任務を終え、基地へと帰還します。出撃前に彼を含めた乗員たちは、自分たちが給油したB-2がどのような任務に就いているのか概要程度は知っていたものの、基地に戻ってくると、別の形でその任務の重大さを再確認することになったといいます。
彼が基地で見たのはテレビのニュース番組。そこでイラク戦争が始まったことを知ったのだとか。彼いわく「私はあの夜、実戦に向かう前のステルス爆撃機を給油した数少ないブーム・オペレーターとなりました」。
アメリカ空軍の統計によれば2003年3月20日から1か月の間に、同空軍の戦闘機・軍用機が出撃した回数は9333回にもなるのだそうです。一方で、それらを支援する空中給油機の回数も同期間で6193回にものぼっており、現代の航空作戦において、いかに空中給油機が重要な存在であるかを示しているともいえます。
世界中での任務を目的としているアメリカ軍は、戦闘機などの正面で戦う兵力だけでなく、この空中給油機のような支援機やインフラが充実しているのが特徴です。今回紹介したB-2爆撃機の長距離任務飛行も、それを可能にしたのは機体の性能やパイロットの練度だけでなく、多数の空中給油機や支援体制を準備できるアメリカ軍の組織力の高さが理由だといえるでしょう。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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