国内わずか2例「懸垂式モノレール」は「負け組」なのか? 跨座式との”独仏代理戦争”互角の戦いの歴史
日本への本格的な都市モノレール導入をめぐり、「跨座式」「懸垂式」という全く異なるタイプを採用する、ドイツとフランス、2つの規格の争いがありました。どんな結末を辿ったのでしょうか。
「後追い勢力」の自滅、そして現在
当時、アルヴェーグ式をもとに東芝が独自に開発した「東芝式」や、ロッキード社と提携した川崎の「ロッキード式」など様々な方式が乱立していました。しかも東芝式を導入した大船の「ドリームランド線」は設備の不備で1年で営業休止、ロッキード式を導入した「姫路市営モノレール」もすぐに経営危機に陥るなど、逆風が吹いていました。
そこでモノレール協会は1967(昭和42)年頃から標準規格の策定に乗り出し、「跨座式では日本跨座式、懸垂式ではサフェージュ式が基本」とされました。
時代にギリギリ踏みとどまったサフェージュ式はその後「千葉都市モノレール」で採用が決まり、現在も2路線が走り続けています。長い間推進役だった三菱グループですが、2015(平成27)年に保有する株式をみちのりホールディングに譲渡し、保守などを除いてモノレール事業から一歩引きました。
今後あらたな「サフェージュ式」モノレールが誕生するかというと、現在のモノレール整備計画が既設線の延伸のみで具体的な新線建設計画も無いため、可能性は低いと言わざるを得ません。しかし懸垂式モノレールの放つ独特の存在感は、これからも人々を魅了し続けることでしょう。
【了】
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
コメント