敵の爆撃機、ウチの国のじゃ…!? 謎のドイツ機「ドルニエDo200」名称すら欺瞞の特殊部隊
あえて「Do200」と名付けたワケ
特別部隊は第200爆撃航空団(KG200)と名付けられました。この部隊は名称こそ爆撃航空団ですが、実態は各種の特殊任務を実施する特殊飛行部隊でした。そしてB-17は、アメリカやイギリスといった連合軍が占領した地域にパラシュートで諜報員を送り込んだり、大編隊で飛来するアメリカ第8航空軍の爆撃機編隊を追尾してその構成や位置情報などを刻々と通報したりといった、アメリカ製の機体でなければできない特殊な任務に用いられたのです。
しかし、B-17という敵の名称そのままの運用では支障もありました。そこで、ドイツ軍が再生・運用するB-17は、「ドルニエDo200」という秘匿名称で呼ばれることになります。
当時、ドイツ空軍はフォッケウルフFw200「コンドル」という4発エンジンの哨戒爆撃機を運用していたため、連合軍側を混乱させる観点から、あえて同機に酷似した機番が採用されたといいます。なお、ときにはドルニエDo288という型式名も用いられました。
かつて作家のJ.D.ギルマンと俳優のジョン・クライヴは共著で、ドイツ軍が鹵獲したB-17で編成した小編隊が、新型爆弾を用いてロンドンの政治中枢を爆撃しようとする内容の小説『KG200』を発表しています。
日本においても、漫画家の故松本零士氏が描いた戦場まんがシリーズの1作『成層圏気流』で、ドイツが開発した新型爆弾(原子爆弾)を輸送する機体として、やはり鹵獲されたB-17を登場させています。
アグレッサー任務以外となると、鹵獲機の運用には、どうしても謎めいた雰囲気が纏わります。加えて名称も、既存機のFw200と誤認を誘うようなDo200と名付けているのであれば、「天才ストーリーテラー」の方々の創作意欲に火をつけるのも当然なのかも知れません。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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