ウクライナ熱望のF-16、反転攻勢のカギに…だけじゃない? 万能戦闘機を与えるNATOの“意図”

F-16のマルチロール性が必要なワケ

 現状では、ウクライナ海軍は壊滅状態ですから、艦艇による同半島の防衛は困難です。そこで、独自開発した国産対艦ミサイル「ネプチューン」や、デンマークから供与されたアメリカ製対艦ミサイル「ハープーン」を沿岸部に配備し、その射程内の制海権を確保すると考えられます。

 また、空からの脅威に対処するために9K37「ブーク」や9K330「トール」、それに加えて、NATO(北大西洋条約機構)加盟国から供与されたNASAMSや「パトリオット」といった戦域防空用の長射程対空ミサイルが配備されると思われます。

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★ウクライナ軍で運用される地対空ミサイル「パトリオット」(画像:ウクライナ軍参謀本部)。

 とはいえ、これら地上発射式の対艦ミサイルや対空ミサイルの射程外となるエリアの制海や制空となると、味方の艦艇や航空機に頼らざるを得ません。ところが、ウクライナ海軍の現状では、艦艇を用いた黒海の制海や制空は事実上不可能。おのずと航空機に頼ることになるため、クリミア半島内の航空基地に、ウクライナ空軍機が展開することになるのではないでしょうか。しかし、現在の同空軍の保有機数では、十分な制海と制空をこなすのは難しいのが現実です。

 ゆえにドローンなども投入されるでしょうが、その点、F-16は制海と制空を同一機でこなせる能力を備えています。同機のキャパシティーであれば、対艦ミサイルと対空ミサイルの両方を搭載しての洋上パトロールが可能です。そのため、陸上配備の対艦ミサイルと対空ミサイルの射程外となる範囲の制海と制空を担うことができます。

 反転攻勢の開始前、ウクライナは同機を盛んに求めていましたが、それは全般的な航空戦力の底上げという意味合いはもちろんのこと、将来的にクリミア半島を奪回した際に、同地の防衛と黒海の制海・制空権を維持するうえで、同機が適しているという判断もあったからではないでしょうか。

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