結局「歩兵戦闘車」の役割は 変わる戦車との関係性 紆余曲折を重ねたブラッドレー2後継開発
新しい戦闘チーム構想のハブ機能に特化するのか?
OMFVは任意人員配置という名が示すように、当初は無人化によるロボティックス技術を盛り込んでいましたが、プログラムが進むにつれて技術開発が追いついていないようで、無人化の要素は重視されなくなっています。一応XM30は、地図上のウェイポイント間を自律走行する機能を備えることになっていますが、無人戦闘能力付与はさらに後になりそうです。空では無人機が活躍していますが、地上ではまだハードルは高いようです。
XM30はM2ブラッドレーよりも乗員や歩兵収容数は減ります。M2は乗員3名、添乗歩兵7名ですが、XM30は乗員2名、添乗歩兵6名となります。武装は強化され、50mm機関砲を装備します。またアクティブ防御システム(APS)を採用し、防御力向上も図られています。
目玉となっているのがドローンの運用能力付与です。アメリカ陸軍には無人機、無人車を部隊に参加させる「有人無人戦闘チーム」という構想があり、XM30はドローンの発射、制御管制機能を含むこの戦闘チームのハブ機能も期待されています。
一方ロシア・ウクライナ戦争では、戦車が歩兵戦闘車の役割を兼ねるような場面も見られます。戦車の本来任務とされていた対戦車戦闘はほとんど起こらず、戦車が歩兵の支援や砲兵のような砲撃戦を行っています。ロシアがT-55戦車のような、1960年代の旧式戦車まで持ち出していることに西側の一部は嘲笑しているようですが、歩兵支援なら十分な戦力になります。戦車は歩兵戦闘車より火力も防御力も優れるからです。歩兵にしてみれば乗車こそできませんが、旧式でもBMP歩兵戦闘車よりT-55の方が頼りになります。
結局、歩兵戦闘車の任務は何がふさわしいのか。アメリカ陸軍が歩兵戦闘車の将来形を、XM30でどのように具現化していくのか注目されます。マルチな戦闘車は歩兵戦闘車からではなく戦車から生まれ、歩兵戦闘車は直接戦闘しないネットワークのハブに特化した指揮通信車になってしまう可能性もあります。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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