戦車は壊されて当たり前!? 西側の車両は安全か ウクライナで浮上する「どこで修理するか」問題
カギは損傷車両をいかに早く戦線に戻すか
アメリカはM2歩兵戦闘車を109両供与しているので、6月の反攻から2か月を経たずして4割以上が失われた計算になります。現代戦の苛烈さを思い知らされます。それを補充するかのように、アメリカは6月13日に早くもM2を50両追加供与することを発表したので、総数は159両となりますが、部隊に配備されて戦力化されている実数はわかりません。アメリカ軍では一般に修理できないほど大破したものや回収不能な車両を破壊とみなし、修理可能な車両を損傷と区別するので、約半数は修理可能ということになります。
この損傷車両をいかに早く戦線に戻すかが戦力維持のポイントです。2023年初めからドイツで行われているウクライナ兵を対象にした戦車や装甲車に関する教育訓練では、操作方法だけでなく修理方法までカリキュラムに含まれており、先のワシントン・ポスト紙は、ウクライナ軍が前線近くでM2を修理している様子を紹介しています。ウクライナは戦車も生産できる工業基盤があるので、損傷車の多くは国内で修理可能です。しかし、スペアパーツの供給が追い付かず損傷の激しい車両から部品をはがして転用することも行われているので、新たに供与されない限り、稼働総数が持ち直すことはないでしょう。
車種や損傷度合によっては、修理を国外で行わなければならないこともあります。比較的新型のレオパルト2A6や2A7戦車はドイツまで送らなければなりません。また、レオパルト2A4やM2で損傷の激しくウクライナの手に負えないものは、隣国のポーランドで修理することになっていますが、同国の修理能力を高めるため、ドイツの技術協力で修理工場を新設することが計画されていました。しかし費用の面で揉め、ドイツの経済誌「ハンデルスブラット」の記事によれば、白紙撤回されてしまったとのことです。
ウクライナ軍の幹部は「修理のためにポーランドに送らなければならない車両が減れば減るほど、より多くの人命が救われる。現場部隊はM2が前線に戻るまで何週間も待つわけにはいかない」と述べており、何とか自国で修理しようと奮闘しています。
コメント