人類終わってたかも? 世界最大・最恐の爆撃機B-36が奪った「たった一つの命」とは
B-36が奪った命はただ一つ「味方の超偉い人」
アメリカ海軍はこのころ、核兵器を運用可能な攻撃機を搭載できる超巨大空母「ユナイテッドステーツ」の建造を計画していました。アメリカ海軍のB-36批判は、同機の導入により国防予算に「ユナイテッドステーツ」を建造する余裕がなくなり、また超大型空母と核兵器を運用可能な艦載攻撃機の存在意義が失われることを恐れたが故のことでした。
これは要するに、アメリカ軍内の予算獲得合戦なのですが、空軍と海軍、さらには国防費の抑制を主張するトルーマン大統領の間で板挟みとなったジェームズ・フォレスタル国防長官は心労により長官職を辞職。辞職から2か月後には自ら命を絶ってしまいました。
B-36は、本格的なジェット爆撃機であるB-47やB-52が実用化されたこともあって、1948年の就役からわずか11年後の1959年に退役しています。
とはいえ、その間B-36は一度も実戦には投入されていません。開発時に想定されていたドイツや日本、第二次世界大戦後に想定されていた旧ソ連への攻撃にも用いられず、奪った生命が自国の国防長官一人というのは、なんとも皮肉な話と言えるでしょう。
B-36はその巨大さゆえ、現存している機体が5機しかありません。筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)はアメリカ・アリゾナ州にあるピマ航空宇宙博物館で保存されている機体を見学したことがありますが、搭載を想定していた核兵器で世界を破滅させていたかもしれず、またアメリカ軍内の争いで国防長官を自死に追い込んだ爆撃機であるという潜入感を持っていたせいか、砂漠で翼を休めるその姿を目にした時、軽い身震いを禁じ得ませんでした。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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