機数減らしすぎた結果? イタリアのF-35Bめぐり空軍×海軍“綱引き” 空母と陸上どっちで運用問題
F-35Bに絡む海軍と空軍、個別の運用思想
F-35Bは、F-35シリーズの中で最も機体構造に関して特徴があるタイプといえるでしょう。機体尾部のエンジンノズルは折り曲げて下方に向けることができ、胴体前部のリフトファンと合わせることで、短距離での離陸やヘリコプターのような垂直着陸が可能です。固定翼機でありながらもホバリング(空中停止)をすることまで可能です。
だからこそ、F-35Bは前述したように日本も海上自衛隊のいずも型護衛艦で運用しようと調達を決めています。ただ、日本の場合は運用の効率化を目指して、F-35Bといえども航空自衛隊に全機配備することが決まっています。
一方、イタリア海軍の場合、すでに軽空母「カヴール」と「ジュゼッペ・ガリバルディ」を保有しており、これにF-35Bの運用が可能な強襲揚陸艦「トリエステ」も就役を控えています。これらの艦載機としてイタリア海軍は従来、アメリカ製のVTOL機であるAV-8B「ハリアーII」を運用しており、F-35Bはこれらの更新機として導入される予定です。
一般的に艦載機としてのイメージが強いF-35Bですが、小型空母から単独で離着陸できるSTOVL能力は、陸上基地の運用でも有効です。本来、戦闘機を運用するには大きな滑走路と支援設備が必要ですが、F-35Bの場合は小規模な空港設備からでも発進することができます。
近年のウクライナ紛争を鑑みてもわかるように、有事が発生した場合、空軍基地は巡航ミサイルなどの長射程兵器によって真っ先に狙われる可能性があります。そういったなか、出撃する場所の選択肢が多く運用面で冗長性のあるF-35Bは、空軍が陸上機として運用する上でも充分にアドバンテージがあります。
こうした理由から、イタリア空軍はF-35の「A」型だけでなく、「B」型も同時に導入を進めているといえるでしょう。しかし、同じ機種を別々の組織で運用することに関して、イタリアではある問題が持ち上がっています。それは同国におけるF-35の運用が、はた目から見ると非合理的なのではないかという点です。
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