機数減らしすぎた結果? イタリアのF-35Bめぐり空軍×海軍“綱引き” 空母と陸上どっちで運用問題

導入数の削減で互いにギリギリ、海軍と空軍どうするの?

 イタリアはもともとF-35の開発計画に初期の頃から参加しており、機体の購入だけでなく、ヨーロッパ向けの機体製造と整備を行うFACO(最終組立・検査施設)もイタリア国内に建設しています。FACOはアメリカ国外ではイタリアと日本にしかなく、イタリアにとってF-35は戦力だけでなく防衛産業の面でも関わりがある重要なプロジェクトだといえます。

 しかし、イタリアの財政問題や、2018年に発足したジュゼッペ・コンテ政権によって、イタリアのF-35導入計画は大きな影響を受けます。特に同政権は国防予算の削減を政策に掲げており、その対策としてイタリア軍のF-35の導入中止まで提言したほどです。最終的には導入機数の削減で折り合いがついたものの、その影響でイタリア軍が導入するF-35の総数は131機から90機まで減少、結果F-35Bは62機から30機となりました。

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2023年8月4日に小松基地に演習参加で飛来したイタリア空軍のF-35A。誘導しているのは航空自衛隊の隊員(イタリア空軍)。

 空軍と海軍はこの30機のF-35Bを折半することになりましたが、「A」型を別に持つ空軍はともかくとして、「B」型しかない海軍としては充分な数とは言えないでしょう。空母「カヴール」のF-35B搭載数はおよそ10機前後とされています。機体の一部が整備に入ることを考えれば、15機がいかにギリギリの数字なのかがわかります。

 少ないF-35Bをより効率的に運用するため、空軍と海軍は各々のF-35Bを合同で各種訓練に参加させています。2021年に行われた演習では海軍の空母「カヴール」に、空軍のF-35Bが初めて着艦を行っており、この時は同じ甲板上に両軍の機体が並ぶこととなりました。

 演習に参加した軍高官によれば、今後も空軍と海軍のF-35Bがそれぞれの演習や任務を参加する機会は増えるようですが、両者がより踏み込んで、機材や人材を共有化する統合運用についてはまだ正式な決定はされていません。メーカーであるロッキード・マーチンが発表したリリースによれば、海軍はF-35Bを運用する独自の基地を候補に挙げています。

 現在、イタリア軍に納入されたF-35Bの数は6機程度と少なく、特に海軍の場合はようやく乗員の育成や部隊の立ち上げが始まった段階といえるでしょう。今後、訓練や任務の機会が増えることで、機数の不足は問題となってくる可能性があり、空軍と海軍で別個に運用する不都合を避ける意味から、イタリア軍内におけるF-35Bの在り方にも大きな変化がでるかもしれません。

【了】

【イタリア空母の上に並んで駐機】イタリア海軍と空軍それぞれのF-35Bを見比べ(写真)

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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