初来日のイタリア空軍「実は100年前にも来てました」!? 人類初の欧亜飛行を“再現した”と語るワケ

パイロット育成に次世代戦闘機共同開発、現在進行形で続くイタリアと日本の関係

 実は今回の展開は、約100年前に行われたこの複葉機での飛行を再現したものでもあるようです。イタリア空軍は今年が創設100周年となっており、イタリア空軍のプレスリリースにある派遣部隊司令官のコメント欄にも「イタリア空軍創設100周年の今年、私たちは世界でもっとも新しい航空機を使って、この旅を再現しました」と明記されていました。

 航空自衛隊とイタリア空軍が共同で行った記者会見においても、航空総隊司令官の鈴木康彦空将が前出の1920年に実施されたローマ~東京間の飛行を例に挙げ、「空と空の絆は100年以上続くものです」と詩的な表現で両国の関係をアピールしていました。

 受け入れ拠点となった小松基地でも、訓練に参加するF-15J「イーグル」戦闘機の1機を特別塗装機としてドレスアップ。機体には日本とイタリアの国旗のカラーをモチーフにしたデザインが施され、垂直尾翼にはイタリア空軍創設100周年のロゴも入れられていました。

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共同記者会見に参加したイタリア空軍のビアバッティ中将(左奥)と、航空自衛隊の航空総隊司令官鈴木空将。手に持つのは記念品交換の盾(布留川 司撮影)。

 もっとも、展開の一番の目的は、軍事と安全保障上に関連したものです。前出のイタリア空軍のプレスリリースでも「異なる航空機をイタリアから1万km以上も離れた場所への展開は、『航空遠征』および指揮統制分野における高度な技術の証明であり、具体的なデモンストレーションでもあった」と説明しています。

 また、日伊両国は100年前の偉業だけでなく、現代でも安全保障の分野においてパートナー関係にあります。

 昨年(2022年)にはイタリアにある「IFTS(国際飛行訓練学校)」で空自パイロットの教育委託が始まっているほか、次世代戦闘機に関しても日本、イタリア、イギリスが共同で開発する「GCAP」(グローバル戦闘航空プログラム)として発表されたのは記憶に新しいところです。

 海上自衛隊についても今年(2023年)6月、横須賀基地に哨戒艦「フランチェスコ・モロジーニ」がイタリア海軍の艦艇として初来日し、7月には海上自衛隊がイタリア海軍とF-35戦闘機の運用で協力していく方針を記者会見で明らかにしています。

 近年、中国への対応を念頭において、自衛隊と外国軍との交流は活発になっています。航空自衛隊においても、昨年からドイツ空軍、インド空軍、フランス空軍との戦闘機が参加する共同訓練を実施しており、今回の小松基地での日伊共同訓練もそれに続くものです。

 ただ、イタリアにおいてはパイロットの教育や戦闘機開発でも協力関係にあり、この繋がりはヨーロッパの他の国との繋がりや連携の架け橋になる可能性もあります。

 どうしても他国との防衛や安全保障での国際的な連携というと、アメリカやイギリスとのやり取りに目が行きがちです。しかし、実は日本とイタリアのパートナーシップについても、今後は注目すべき事柄なのかもしれません。

【了】

【イタリアからどうやって?】100年前の複葉機と伊空軍F-35Aのルート(地図)

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