「明治の鉄道」実現させた「カネと商才」は山梨生まれ!? 大手私鉄の黎明期救った”やり手実業家”たち

明治時代に鉄道が各地で誕生していきますが、アイデアだけでつぶれていく計画もありました。それを資金力やカリスマで実現に至らしめた「実業家」がいましたが、その中心がいわゆる「甲州財閥」でした。

「国鉄と私鉄」の構図が生まれるきっかけにも

 近代国家の礎としての鉄道を重視した雨宮は「鉄道国有化」論者でしたが、いっぽうで地方開発には「民営事業者が地域の実情に応じた鉄道運営を行うべき」との考えでした。鉄道国有化以降は地方電気鉄道の経営に注力し、1908(明治41)年に「大日本軌道」を設立しました。

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若尾逸平肖像(『甲府市制四十年記念誌』より)

 同社は雨宮が出資していた未開業含む8社を合併する形で設立され、それぞれ福島、小田原、静岡、浜松、伊勢、広島、山口、熊本の各支社として位置づけられました。大日本軌道が開業させた路線のうち、現在の遠州鉄道(浜松支社)、静岡鉄道静岡清水線(静岡支社)などは現在も営業しています。

 それから3年後の1911(明治44)年、雨宮は64歳でこの世を去ります。大日本軌道はその後も存続しますが、大正中期までに各路線が独立する形で解体されました。

 一方、雨宮より26歳年上の若尾は、雨宮の死から3年後の1913(大正2)年に93歳で亡くなりました。二大巨頭が去った甲州財閥は昭和期に入ると緩やかに影響力を低下させていきます。

 これは世界恐慌で甲州の主力産業である製糸業が打撃を受けたことに加え、交通事業と電力事業が恐慌以降の経営合理化、統制の強化により国家や大資本に吸収されたことが影響していると思われますが、それでも甲州の人々が近代東京の基礎となった「乗り物」と「明かり」を作り上げたという功績は揺らぎません。

【了】

【画像】ヤバイ…! これが「終戦直後の通勤風景」です

Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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