最近の戦車が「どれもこれも主力戦車」なワケ いったい何が「主力」?

東西冷戦で急速に一本化されていく

 第1世代の主力戦車は、まだそれほど万能化が完全ではなく、機動力や火力を補うために軽戦車や重戦車と併用された時期もありますが、エンジンの高出力化や装甲の技術革新、砲弾や砲身の進化、戦訓の積み重ねにより、戦車の種類は火力、機動力、防御力をバランス良く持つ主力戦車へ集約されていくことになります。

 その象徴のひとつが、冷戦期のソ連軍を基幹とするワルシャワ条約機構軍が計画した「縦深攻撃」です。西側諸国に侵攻すべく、東西ドイツ国境全域に配備した1万両以上の戦車を主力とする部隊によって敵の戦線を破壊する計画により、戦車装備の共通化と運用の平準化が急速に進み、加盟国の地理的事情なども関係なく、戦車はT-55やT-72など、ソ連系の主力戦車で一本化されます。

 対するNATOなどの西側諸国でもこれは同じです。国の地形や思想により自動装填装置の有無や機動力と防御力どちらを重視するか、といった差異はあるものの、砲身に関しては、西側で共通の砲弾を使用するという観点から、第2世代主力戦車は「ロイヤル・オードナンスL7」、第3世代以降は「ラインメタル 120mm L44」などの砲身を採用しました。加盟国はそれらをライセンス生産し搭載したり、同じ仕様のものを自国開発したりするようにもなりました。

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最も普及している主力戦車のひとつである「レオバルト2」(画像:ドイツ連邦軍)。

 冷戦終了後はコスト削減のため、主力戦車を小型化したような軽戦車も登場。インドネシア・トルコ共同開発のMMWTやアメリカ陸軍でも軽戦車相当の火力支援車両である「MPF」の調達を2022年6月から行っています。また、陸上自衛隊の16式機動戦闘車のように、主力戦車の数の穴埋めを装輪戦車が行うケースもあります。

 しかし、基本的な任務を万能にこなせる主力戦車が陸上戦において重要なのは変わりません。さらに大きな技術革新でもない限りは、主力戦車が文字通り“主力”として使われることになると思われます。

【了】

【え…ちっさ!】これがアルゼンチンの台所事情で考え出された主力戦車です(写真)

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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