ロシア戦車増産で“鉄道ピンチ”なぜ? じわり戦時体制へ 「新型貨車」がいろいろ象徴的な件

あおりを受ける鉄道、なぜ?

 急拡大する軍需生産の「とばっちり」を受けているのが鉄道部門です。UVZは鉄道車両も製造しており、生産規模は戦車よりも大きいです。戦車を生産している重工業メーカーが鉄道車両も製造している例はよくあり、有名なところではドイツのクルップ社やヘンシェル社、アメリカのボールドウィン・ロコモティブ・ワークス社、旧ソ連ではハリコフ機関車工場など。戦車と機関車や鉄道車両は工業的に類似性があります。

 UVZでは、戦争が始まってから戦車や装甲車の生産・修理の取扱量が3.6倍になり、その分、鉄道車両生産が圧迫されています。経済制裁によるカセットベアリングの供給減少など部品不足も影響しており、2022年には鉄道車両の生産量を1万3800台から7200台へとほぼ半減させたと報じられ、2023年もこの傾向は変わらないようです。

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ウラルヴァゴンザヴォド(UVZ)の戦車生産ライン(画像:ウラルヴァゴンザヴォド)。

 ロシアでは軍事輸送はもちろん、物流の多くを鉄道に頼っています。西側から経済制裁を受けていますが、ロシア経済はあまり衰えを見せず流通量は増え続けています。ウクライナ戦線への補給線も鉄道が担っており、この路線には燃料を運ぶタンク車や戦車などを運ぶ平台貨車が集中運用され、貨車不足が問題になってきているほどです。

 しかし鉄道輸送量全体を見ると、貨車の需要と供給の関係は「供給過剰」で貨車は余り気味。2022年末には貨車の削減も提案されたほどです。これは特別軍事作戦によって物流量とルートに大きな偏りができ、貨物輸送先が西方から東方のバイカル・アムール鉄道とシベリア鉄道方面に大きく移行したことにより、貨車の回転率が悪化し、特定の路線と品目で輸送能力をオーバーしたからだとされています。

【人が乗れる…?】これがロシア国防省発注の「新型貨車」です(写真)

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