ロシア戦車増産で“鉄道ピンチ”なぜ? じわり戦時体制へ 「新型貨車」がいろいろ象徴的な件
新型「貨車」です…明らかに人が乗る仕様じゃないか!
ロシア産業・通商省は「貨車不足は一時的で、ロシアの貨車生産能力は年間約8万台あり需要を賄うことはできる」と楽観的な見積もりをしています。
国防省からUVZへの注文は戦車だけではなく貨車もあります。UVZは新型貨車(スライドドア付きの汎用屋根付き貨車:モデル11-5225-01)を開発しました。発注者は国防省ですが、形式的には民生品ということになっています。しかし貨車としては構造がやや変わっており、車内には寝台や装備品を収められる収納具があり、空調熱源機や換気装置も備えられ人が乗ることも想定されています。
これは「新型貨車」とはいいながら、もともと19世紀後半から使われていた「テプルシカ」と呼ばれる人員輸送用貨車を、時代に合わせてリバイバルしたものです。「テプルシカ」は有蓋貨車ですが、有時には兵員輸送に使えるよう寝台と石炭ストーブが設置でき、車体には木材やフェルトなどの断熱材が取り付けられ、側面にはガラス窓が付いていました。もっとも、資材や時間の制約から仕様通りになっていないものもありましたが、「テプルシカ」は大量生産され、帝政時代から1950年代まで軍人や囚人、強制送還者の輸送に使われました。
前線に出征する兵士と「テプルシカ」のイメージは深く結びついています。T-80のリバイバル生産と合わせ、ロシアはじわじわ戦時体制に移行していくのでしょうか。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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