空中で“停止”できた!? 使い勝手サイコーな小型機「戦場のコウノトリ」数々の有名軍人になぜ愛された?

イギリスで「シュトルヒ」を愛用したのは?

 ほかにも「シュトルヒ」を重用した将官として、「砂漠の狐」の異名が付けられた、かのエルヴィン・ロンメル元帥も忘れるわけにはいきません。北アフリカに広がる広大な砂漠の戦場で、自身の目で直接偵察したり陣頭指揮をとったりするため、急ぎ移動する際に本機を活用したといわれています。

 ソ連軍戦闘機の活動が少ない東部戦線では、「シュトルヒ」は重要な連絡任務を帯びた高級士官を短時間で運ぶ「空のタクシー」として用いられたばかりでなく、急ぎ後送が必要な重傷者を運ぶ「空の救急車」としても重用されました。

 しかも、「シュトルヒ」の優秀な点は離着陸性能や高い操縦安定性以外にもありました。それは構造が単純で整備しやすかったことです。だからこそ、第一線部隊でも多用できたと言えますが、その整備性の高さゆえに、なんと敵側のアメリカ軍でも、無傷の機体を鹵獲すると自国の国籍マークを大書きして、「員数外の使い捨てOKの機体」として多用したとか。

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ムッソリーニを脱出させるため、山の斜面に駐機するFi156「シュトルヒ」(画像:ドイツ公文書館)。

 また、アメリカと同じくドイツと戦っていたイギリス軍でもその傾向は見られました。代表的なのは、「モンティ」の愛称で呼ばれたロンメルのライバル、バーナード・モントゴメリー元帥でしょう。

 彼は個人機として、ドイツから鹵獲(ろかく)した「シュトルヒ」を愛用したそうで、また同空軍の何人かの将官もモントゴメリーと同じく、個人機として「シュトルヒ」を利用したといわれています。

 ちなみに、大戦中「シュトルヒ」は、ドイツ占領下だったフランスのモラン・ソルニエ社でも造られました。これにより、同社の機体は戦後もMS.500「クリケ」として生産が続けられ、星型エンジンに換装したモデルも生まれています。

 だからか、「シュトルヒ」は大戦終結から80年以上経った2023年現在でも飛行可能な機体が数多く残っており、ゆえに今日も、エアショーなどで「シュトルヒの血を引く機体」は元気に飛び回っています。

【了】

【えっ、Fi156じゃないの?】似ているけど違う! これが「日本のシュトルヒ」です(写真)

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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