なんじゃこりゃ! 風を全力で味方にする「異形の貨物船」も登場 2024年注目の新造船 世界初&国内初が続々

70年ぶりの新造船=「捕鯨母船」とは

 旭洋造船(山口県下関市)で建造中の捕鯨母船「関鯨丸」(約9100総トン)は、2024年3月の竣工を予定しています。捕鯨母船として専用に設計された新造船が建造されるのは約70年ぶり。竣工後は捕鯨会社の「共同船舶」(東京都中央区)へ引き渡され、世界で唯一の捕鯨母船として捕鯨船団の中核を担うことになります。

「関鯨丸」は商業捕鯨の再開を踏まえ、将来的なナガスクジラの捕獲も視野に入れた70トンの揚鯨能力を備える最新鋭の船として計画されました。従来の捕鯨母船とは一線を画した船型で、自動車を運ぶRORO船のような見た目が外観上の特徴となっています。これは、獲ったクジラをさばく解剖甲板を屋内に収めることで、労働環境と衛生環境の改善を図るためです。

 保冷設備は作った分だけ冷凍設備を動かすという発想から、リーファーコンテナを使用。このリーファーコンテナは20フィートコンテナで最大40個、800トン分搭載することができ、製品のロット管理と荷揚げを効率的に行えるようにしました。甲板上には探鯨用大型高性能ドローンのデッキを設けています。なお船室は全て個室化し、居住性を向上させました。就航は2024年5月から6月頃を予定しています。

非効率な“トラック直付けLNG供給”を変える LNGバンカリング船「KEYS Azalea」

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KEYS Azalea(深水千翔撮影)。

 三菱重工業下関造船所で建造中のLNG(液化天然ガス)バンカリング船「KEYS Azalea」(積載容量約3500立方メートル)も2024年3月竣工予定です。これにより、新燃料として注目されているLNGの“非効率な供給”が変わります。

 LNGは、従来燃料である重油に比べて硫黄酸化物(SOx)で約100%、窒素酸化物(NOx)で約80%、二酸化炭素(CO2)で約30%の排出削減が見込まれている環境に優しい燃料で、日本郵船や商船三井、川崎汽船といった大手船社がLNG燃料船の導入を進めています。しかし、日本ではそのバンカリング(供給)の拠点整備が進んでいません。

 たとえば2023年にデビューした日本初のLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない/むらさき」も、燃料補給はタンクローリー複数台を船に直接つなげるトラック・ツー・シップという方式で行っています。

 対して「KEYS Azalea」が実施するシップ・ツー・シップ方式は、貨物を積んで寄港した船が荷役中に必要な燃料を一気に補給できるというメリットがあります。これにより、日本へのLNG燃料船の寄港を促すとともに、バンカリング船を広域で運航することにより、広いエリアでの効率化が図れます。

「KEYS Azalea」は九州電力や日本郵船などが出資するKEYSバンカリング・ウエスト・ジャパンが、西は熊本県、東は岡山県にかけてのエリアを対象としたLNGバンカリング事業を日本で初めて行うために計画されました。竣工後は、戸畑LNG基地(北九州市)を拠点に、九州・瀬戸内地域へ寄港するLNG燃料船へLNGを補給します。

【なんだこれは…】異形の風力装置“全部盛り船”ほか、注目の新造船(写真で見る)

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