自衛隊ヘリ「チヌーク」なぜ重宝? 能登と瀬戸内海で“2正面作戦” ところで「オスプレイ」は?
「オスプレイ」がとって代わるようなことはあるの?
陸上自衛隊と航空自衛隊合わせて、日本では60機あまりが運用されているCH-47「チヌーク」ですが、その一方で陸上自衛隊には似たような装備として、ティルトローター輸送機V-22「オスプレイ」があります。両者はどのように使い分けられているのでしょうか。
実は両者には明確な違いがあります。それが搭載能力と飛行速度です。搭載能力に優れているのはCH-47です。機内に陸自の高機動車などを搭載して飛行することも可能で、さらにはV-22より重いものも吊り上げることが可能です。
一方、飛行速度と航続距離に関しては、飛行機(固定翼機)と同じくらいの速度が出せるV-22に軍配が上がります。同じ場所から同時にスタートした場合はV-22の方が先に到着するので、同機が人命救助用の人員と物資を真っ先に被災地に投入して、後からCH-47が各種の支援物資を大量に空輸してくるというパターンもあるのではないかと考えられます。
ただ今回、陸上自衛隊がV-22を今回の能登半島地震に投入することはありませんでした。それは能登半島特有の山がちな地形と、すでに多くの防災ヘリや自衛隊のヘリが現地で活動しているため、「オスプレイ」と飛ばす必要がないと判断したからではないでしょうか。
なお、陸上自衛隊のCH-47は、能登半島地震だけでなく、1月13日に広島県の江田島で発生した山林火災においても出動しています。
こちらは装備名「野火消火器材I型」と呼ばれる空中消火用バケット、通称「バンビバケット」を使う形での災害派遣で、空から最大7600リットルもの水を撒いて延焼を食い止めていました。
言うなればCH-47は、能登半島と瀬戸内海で「2正面作戦」を展開していたと形容できるでしょう。このように同機は、日本が保有するヘリコプターの中で最大の積載量を誇るという点を活かして、今後も自衛隊の活動を支える必要不可欠な「翼」として日本の空を飛び続ける予定です。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
>ただ今回、陸上自衛隊がV-22を今回の能登半島地震に投入することはありませんでした。それは能登半島特有の山がちな地形と、すでに多くの防災ヘリや自衛隊のヘリが現地で活動しているため、「オスプレイ」と飛ばす必要がないと判断したからではないでしょうか。
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