自衛隊が「慎重すぎる」のか? 高速自慢の「オスプレイ」能登へ出向かない理由とは

固定翼機と回転翼機の長所をあわせ持ち、高速飛行もできるオスプレイは、なぜ能登地方の被災地へ投入されないのでしょうか。それにはやはり、被災地が抱える地理的要因や気候も関係しています。

オスプレイの本務は「防衛」

「険」「狭」と冬季日本海側の天候という環境は航空機にも厳しいものです。オスプレイは高性能ですが、物資を出発地から目的地に運ぶ物流ネットワークの一部に過ぎず、物流を成立させるには前後の経路が整備される必要があります。それが「険」「狭」となればなおさらです。

 また忘れてはならないのは、自衛隊の本務は国の防衛・安全保障ということです。語弊がありますが、大災害でも兵力を全力投入することはなく、使えるものはオスプレイでも何でも使えというわけにはいきません。今この時も、世界はじっと観察しています。

 2011(平成23)年の東日本大震災時も、周辺国は災害時の日本の防衛態勢を探り、原発事故のモニタリングを行う目的で、航空機や艦艇を多く接近させています。それに対応して自衛隊は、警戒監視体制を堅持しました。毎年恒例の富士総合火力演習も実施されています。

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東日本大震災と同年の2011年に実施された富士総合火力演習において、終了後、東北応援のノボリを掲げる参加部隊(月刊PANZER編集部撮影)。

 2024年の空挺降下始めも同様です。災害があっても、日本の防衛体制に揺るぎがないことを示すのが抑止力の本質です。その点で2011年の総火演にも今年の空挺降下始めにも、特別な意味があります。オスプレイの本務は島嶼防衛であり、今回の災害派遣に投入しないのも意味があるのです。

【了】

【写真】海上に物料投下する様子

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