「小笠原に空港」どうなった 現状の建設案“使用機材”次第? トキエア&佐渡との“共通点”も
現在の「小笠原空港」案、どんなもの?課題は
では、2024年現在、「小笠原空港」はどのような方向性で検討が進められているのでしょうか。
現在検討が進められているのは、父島の洲崎地区にある工事用の残土・資材置場として利用されている土地に、空港を設置する案です。もしここに空港建設となった場合、滑走路は1000m以下となる計画です。
ここで想定されている旅客機は国内の地域航空会社の多くが使用しているターボプロップ機「ATR42-600」の派生型で、2025年運航開始にむけ準備が進められているモデル「ATR42-600S」。最短で800mの滑走路で離着陸できることが強みで、冒頭のトキエアでも、佐渡空港就航実現へむけ、このモデルの導入を予定していると見られます。
ATRによるとこのATR42-600Sは日本のほとんどの空港に就航が可能であるほか、この機体を用いれば、本土から小笠原空港まで2時間で結ぶことができるとしています。
その一方で、垂直離着陸が可能なティルトローター(垂直離着陸航空機)機を用いて空路をアクセスする方針も検討されています。想定されているのは世界初の民間向けティルトローター機として開発が進められている「AW609」です。
もし洲崎地区に空港建設が決定したとしても20年以上の工期を要すると報じられていることから、ティルトローター機であれば、それより早く就航できるという分析もあります。ちなみにAW609はATR42-600Sの巡航速度と50km/h程度しか変わりません。
そのようなAW609の実用化の壁となりそうなのが、「型式証明」(その飛行機のモデルが一定の安全基準を満たしているかどうかを、国や地域ごとに当局が審査する制度)です。このモデルの初飛行は2003年。ただその斬新な設計に加え、試験飛行中に事故も起こしていることから、型式証明の取得は現在も完了していないのです。
他方、ATR42-600Sは、一般的なターボプロップ機のカテゴリに入るどころか、旅客機のノウハウに長けた主要メーカー、かつ既存機の派生型という位置づけであることから、型式証明の取得は比較的短期間で済むと見られます。実用化についてはこちらの方が早いかもしれません。
【了】
コメント