SLは「生き物」「すぐに機嫌損ねるし…」 若手が支えるSL人吉ラストラン ただ「訓練は地獄だった」

機関助士の役割とは?

 SLは機関士1人では動きません。石炭をくべたり給水したりする機関助士が不可欠です。「SL人吉」の仮屋 諒機関助士は、入社2年目に初めてSLを見て、「こんなものが今走っているのか」という驚きと、汽笛の音に心をつかまれたといいます。いつかは運転したいと思い、熊本に配属になったことを機に希望してSLへの乗務を目指したそうです。

「SL人吉の運行がこの春までと聞いた時は、率直に悲しかったですが、最後の運行まで携われることを噛みしめながら走っていけたらなと思っています。約13年間運行に携わらせていただきましたが、一言で言えば『お疲れさまでした』という気持ちでいっぱいです」

 そして、最も心に残っているのは実は乗務ではなく、機関助士になるための試験を受ける前のことだそう。

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石炭の投入口である焚口戸。SL運行時はここへ石炭をくべるため、その訓練が必要となる(画像:写真AC)。

「投炭訓練場では1か月間体力づくりをしましたが、それが人生で一番大変だったかなと思います。体力づくりは筋トレで、投炭に関しては10分間で200杯という試験があり、火床に対する炭の高さなどを考える必要がありました。最初の1週間は地獄で、筋肉痛で寝返りも打てないほどでした。夏場のSLは釜(ボイラー)の前だと気温50度ぐらいになりますので、それに慣れる特訓も行いました」

「うれしかったのはやはり、沿線の方が手を振ってくれて、SLの魅力というのがあるのだなと感じた時です。機関助士の役目は、石炭と水とで蒸気を作って走らせるということですが、気をつけることは機関士と力を合わせるということ。機関士が蒸気を欲した時に、蒸気圧を作れるかということが一番難しいところです」

 ※ ※ ※

 まさに大の大人が息を合わせて初めて動くSL。紀寿を迎えた黒鉄が今月、令和の鉄路を走ります。

【了】

全身真っ黒! 100歳超えSLの整備現場(写真)

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