戦艦「高松」…そんな戦艦あったっけ? アメリカが“誤認”した旧日本海軍の艦艇 どこまで正確だった?
情報のプロにも漢字はハードルが高かった?
翔鶴型空母は、ミッドウェー海戦直前の珊瑚海海戦でアメリカ海軍の攻撃隊が写真撮影したこともあり、その存在がに認知されるようになりますが、3番艦として「RYUKAKU」(りゅうかく)が存在し、沈没しているとの記述や、同型艦3隻が建造中という誤った認識もありました。実際に「りゅうかく」なる空母や同型艦は1隻も建造されていません。
ほかにも、大鳳型空母が搭載機52+1機の装甲空母ではなく、搭載機数80機で「エセックス級に匹敵する」との認識に。飛鷹型空母も「ひよう」ではなく「ひたか」と読まれ、「隼鷹」も「じゅんよう」ではなく「はやたか」と読まれていました。
アメリカ海軍が日本軍艦の命名基準を全く理解していないわけではないのは、蒼龍型空母を元に建造された雲龍型空母の2番艦以降が「天城」「葛城」などの山岳名となったことを受けて、「秩父型装甲艦を空母に改装したもの」と理解していることで分かります。しかし同時に、情報のプロであっても、読みを含めた漢字の理解はハードルが高いこともうかがえます。
太平洋戦争におけるアメリカ軍の情報収集は、暗号解読もあって効果的でしたが、同時に「暗号解読をもってしても、誤解や思い込みは除去しがたい」ことも分かります。正しい情報を元に敵を正しく認識することは、いつの時代においても武器や兵糧と同等かそれ以上に重要といえそうです。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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