橋崩落でも物流は「なんとかなる」? 日本とも関係深い全米有数の貨物港「封鎖」 影響は巡り巡ってやってくる!?
史上最高額の補償額で船舶保険高騰の懸念
このように日本に対する直接的な影響は軽そうなのですが、注意しなければいけないのが、物流コストの思わぬ上昇でしょう。
他の港湾がサポートに入るものの、これらには通常以上に負荷が掛かるわけで、人件費や倉庫代など、あらゆるコストが割増しになります。
また代わりの港や物流ルートにも負荷が掛かり、オーバーワークが原因でボトルネックに陥った場合、サプライチェーンのさらなる混乱を生み出しかねません。
船舶保険の高騰を心配する声も聞かれます。
今回の事故で保険会社が支払う補償金は40億ドル(約6000億円)を下らない、ともいわれます。
これまでは、2012年にイタリア中西部沖のクルーズ船「コスタ・コンコルディア」の座礁事故で支払われた推定15億ドル(当時レートで1500億円)が船舶保険補償額の世界最高でしたが、今回はこれを軽く上回る可能性が高く、世界の保険業界は戦々恐々のようです。
このため、世界中の保険会社が経営改善のため、やむを得ず保険の掛け金を“大幅値上げ”する可能性もあります。
こうしたコスト増は、そのまま輸入品の値段にダイレクトに降りかかってきます。
エネルギーや地下資源、食糧の大半を輸入に頼り、しかも円安基調にある日本は、もしかすると、さらなる物価高に襲われる危険性がある、と警鐘を鳴らす経済専門家もいるようです。
【了】
Writer: 深川孝行
1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。
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