日本上空飛来で話題「漆黒の偵察機」U-2が国内で起こした“事件”って? 「あれ何だったの…?」昔もそうだった!

ナゾに満ちた「U-2の日本不時着」その飛行目的とは?

 不時着した際も駆け付けた米国人はアロハシャツに拳銃を携える異様な姿のうえ、米軍将校は機体を撮影した日本人のフィルムを取り上げる始末。こうしてU-2の怪しさは否応なく増し、暮れには国会で取り上げられ追及も激しくなりました。

 事態の鎮静化を図るためだったのでしょう。米国は、U-2はNASA(米航空宇宙局)に所属し、高度16000m以上のジェット気流や天候の観測に適した「防腐剤を塗った民間機」と発表しました。それでも信じる日本人はいません。ただし、日本側も依然、真の目的をつかめず、気象観測を軍用に生かす程度の推測をするしかありませんでした。

 その推測を確信に変えたのが、藤沢飛行場での不時着から約8か月後の1960年5月1日。旧ソ連によるU-2撃墜だったのです。撃ち落された機体は、藤沢飛行場に不時着した機体そのもの。運用していたのは海軍や空軍でなく、諜報機関のCIA(米中央情報機関)でした。

 不時着直後に現れた米国人はCIA要員ゆえにアロハシャツ姿という民間人の服装でしたが、大慌て故に拳銃も携える異様ないで立ちだったと解釈できます。

 なお、冒頭の2024年4月のU-2飛来がフライトレーダーで確認された事象も、上空を通過した理由などは明らかになっていない模様です。それだけ今なお、U-2は黒一色の塗装も相まってミステリアスな機体であると言えるのかもしれません。

 ちなみに、現在の米軍基地ではヘリなどの不時着に備えて基地周辺の自治体や消防も交えて合同訓練を行っています。そのため、強権が発動された、昭和の黒いジェット機事件のような事態にはならないでしょう。とはいえ、安全運航で臨んでほしいのは間違いありません。

【了】

【画像】え、高度! これが「伝説級珍事」U-2日本通過の一部始終です

Writer: 清水次郎(航空ライター)

飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。

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