「歩道走れないの?」「免許不要だと思った」「灯火ない方がカッコいい」…ペダル付原付の取締りで見た“ヤバさ”

ペダル付原付、通称モペットで、交通ルール無視の利用が都市問題になっています。利用者にとっても無免許、無届で乗り続けると「過失」ではすまない深刻な事態を招きかねず、警察も厳しい対応で臨んでいます。

「乗ってはいけないわけではないんです」

 ペダル付原付は、居住地の自治体に軽自動車の納税申告をしてナンバープレート(課税標識)を取り付け、さらに自賠責保険に加入する必要があります。市区町村でナンバープレートを取得する場合の費用はかかりませんが、自賠責保険では保険料が必要なため、この費用を負担に感じる利用者もいるようです。

 無免許と自賠責未加入の罰則は別建てなので、この状態で車両を乗り回した場合、無免許の罰則に加えて「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に問われる可能性があります。

 この場合は、無免許の違反点数に保険未加入の違反点数も加算されるため、免許の取得ができない期間が、さらに長くなります。仮に、交通事故で加害者となった場合、当然保険は適用されませんから治療費は全額加害者負担です。

 前述の渋谷区での取締りでは、乗っていたペダル付原付のバックライトの下に取付金具が付いているのに、ナンバープレートがなく、ねじ穴だけが目立つ車両もありました。

 現状では販売者が道路交通法の車種区分「一般原付」「特定小型原付」「自転車」を明示することなく、「eバイク」「EVバイク」など車種区分をあいまいにした用語で、購入のハードルを下げている場合があります。購入者もウインカーなど必要な保安部品が付いていないほうがすっきりした印象に見えると、自転車的なペダル原付を好む人もいます。しかし、知識不足で車種区分を誤認したとしても、利用者の責任回避は難しいです。自走できる車両は、車両の形状を問わず、まずは原付バイクと同じと考える必要があります。

 渋谷区の取締まりでは、わずか2時間程度の間に、無免許運転被疑者2人が検挙されました。また、歩道走行(通行区分違反)1人、ノーヘル2人、うち1人はナンバープレート未装着で、計5人が違反に問われています。取締りにあたった警察官は、違反者にこう語りかけました。

「乗ってはいけないわけではないんです。免許をとって、乗るための手続きをすれば乗れるのです」

Large 20240508 01
刑事罰に問われない違反は、その場で違反切符と反則金納付書が手渡される(中島みなみ撮影)。

 ペダル付原付(モペット)の違反は東京都内だけでも、2022年が31件。2023年が56件。今年は2月の暫定値で37件と、利用増加に伴って急増中です。取締りにあたる警視庁交通部交通執行課の丸山佳高管理官は、次のように話します。

「モペットは自転車ではなく、原付以上のバイク。バイクに必要な交通ルールを守って安全に走行していただきたい」

【了】

【はい止まって!】→ナンバーないね→署まで その一部始終(写真で見る)

Writer:

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

最新記事

コメント