日本人を「電車大好き」にさせた張本人!? 「湘南電車」何が画期的だったのか 緑&橙ツートンの元祖
鉄道業界の「ゲームチェンジャー」に
こうして登場した80系電車は、神奈川県の湘南地方を走ることから「湘南電車」の愛称で呼ばれ、利用者に親しまれるようになりました。電車での中長距離運転を可能にした技術的成果は、同じく島 秀雄が設計を主導した151系特急電車や新幹線へとつながり、客車列車を次々と置き換えて現在の「電車王国」日本を形作ることになります。
鉄道車両のデザイン面でも、80系電車は大きな影響を与えました。製造当初の先頭車は前面に3枚窓を採用していましたが、1950(昭和25)年後半に増備された車両からは、中央に折り目がついて「鼻筋」の通った顔つきに大きな2枚窓というデザインへと変更され、俗に「湘南形」と呼ばれるものになっています。
また、湘南形の前面デザインは国鉄(EF58形電気機関車など)だけにとどまらず、私鉄にも波及し、各社で80系電車に影響されたであろう湘南形の顔つきを持つ車両が登場しました。いかに80系電車がエポックメイキングな車両であったかがわかります。
80系電車は2024年6月現在、京都鉄道博物館に先頭車と中間電動車のトップナンバーである「クハ86001」「モハ80001」の2両が保存展示されています。残念ながら「湘南形」の元祖である前面2枚窓の車両は保存されていませんが、JR藤沢駅のホーム上にはその姿を模した売店(NewDays)があるので、雰囲気を味わうには良いかもしれません。
【了】
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。
コメント