航空機開発の“お約束”ブチ破った! 軽い・安い・使い易い傑作機A-4「スカイホーク」ができるまで
A-4に与えられた新たな役割
この飛行性能に目を付けたのが米海軍のデモンストレーション・チーム「ブルーエンジェルズ」でした。ブルーエンジェルズでは派生型のA-4Fを12年間にわたって使用し、超低空を800km/hで飛行しながら翼端と別機のキャノピーの間隔がなんと36インチ(91cm)しかない密集編隊や精緻な飛行展示で観衆を魅了しました。
しかし、米軍ではA-4の攻撃機としての任務はそう長くはありませんでした。米海軍では1970年代に後継機A-7「コルセアII」と、海兵隊では1980年代に垂直離着陸攻撃機AV-8B「ハリアーII」と交代しました。
実戦部隊における任務を解かれたA-4のいわば「転職先」となったのが、訓練機と仮想敵機役としての役割です。この機は「トップガン」として有名な戦闘機兵器学校をはじめ仮想敵機役を務める部隊で使用されました。そこでA-4は不要な機材を全て取り外して身軽になり飛行性能をさらに高めてミグ戦闘機役を演じています。
その一方で、シンガポール空軍ではA-4を近代化改修して使い続けることにしました。エンジンをF-18に使われていたF404エンジンからアフターバーナーを除いたものに換装しA-4SU「スーパー・スカイホーク」となり2012年まで使用されました。
2024年現在、米軍におけるA-4は全機退役していますが、アメリカ国内では敵機役の機体を提供する民間企業で12機、個人所有機として5機のA-4が飛行可能な状態で維持されています。名機A-4の歴史はまだまだ続きそうです。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
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