戦闘機として「普通に飛べる、けど使えない」衝撃の理由って!? 旧ソ連 “最初のジェットMiG” がある意味伝説だった
まさしく「失敗は成功の母」だった?
MiG-9は、機体の前部に23mm機関砲2門、37mm機関砲1門を搭載する重武装でしたが、その配置が悪かったため、発砲すると生まれる火薬の燃焼ガスがエアインテークに吸い込まれてしまうという欠点が露呈したのです。このガスはエンジンに重大な影響を与えるのもので、特に高高度においては最悪の場合エンジンが停止してしまう危険をはらんでいました。このため、機銃の使用が事実上、禁止されることになったのです。
この戦闘機としては致命的な欠陥を改めるため、ミグ設計局はMiG-9の機銃配置を見直そうと改修に取り組みますが、失敗に終わります。また時間的な制約を考えると、新型機の開発に注力する方がよいと判断され、そちらに方針転換が図られました。こうして生まれたのが、次世代モデルのMiG-15「ファゴット」でした。
MiG-15は、武装こそMiG-9と同じ23mm機関砲2門と37mm機関砲1門という構成でしたが、前出の教訓を活かし、エアインテーク形状や機銃配置を根本から見直していました。こういた改善によって、MiG-15ではMiG-9の時に起きたようなトラブルはほとんどなく、むしろ優れた性能と信頼性の高さから、朝鮮戦争においてもその実力を遺憾なく発揮し、西側諸国に大きな衝撃を与えています。
なお、MiG-9は前述したような欠陥を持っていたにもかかわらず600機あまりが量産され、配備された実戦部隊でも根本的な欠陥に苦しまされた模様ですが、ソ連の航空技術の進化に貢献したところは大でした。
ひょっとしたら、MiG-9で失敗していなければ、MiG-15がエンジン停止の欠陥に悩まされたかもしれません。技術の進歩は、常に成功の連続ではなく、数々の試行錯誤と失敗を経て達成されるもの。その代表的な失敗がMiG-9であり、同機が存在したからこそ傑作機MiG-15が誕生したと言えるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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