迷惑!相席ブロック・直前キャンセル・予約逃げ…バス業界が“無防備”だった歴史的理由 「キャンセル料を上げる」デメリットも

予約した人が現れない! そのキャンセルは「手数料」

 多くの中距離・昼行路線は30分間隔など高頻度で運行され、リピーター比率の大きさが特徴です。リピーターは、予約するにしても乗車日直前が多く、かつ「遅めの便を押さえておき、当日、用件が早く終われば一本前の便に変更して帰宅」というように、予定に縛られない使い方を好みます。

 鉄道には自由席のほか、指定席に乗り遅れても後の便の自由席を利用できるという柔軟さがあり、それに対抗するため「当日支払い」という方法で手軽さを追求したのです。これが、80~90年代に高速バスの急成長を後押ししました。

 2000年以降、京王バスが運営する「ハイウェイバスドットコム」を皮切りに高速バスのウェブ予約が一気に定着します。追って、クレジットカードなどによるウェブ決済も普及しました。窓口に出向かなくても発券(決済)できるようになったことを受け、ノーショー対策として、ウェブ決済へ積極的に誘導した上で「予約後3日以内」や「前日24時まで」など決済期限を設け、未決済の予約を自動的にキャンセルする路線が増加しました。

 その結果、ノーショーは減ったのですが、今度は直前キャンセルの心理的ハードルが下がりました。以前なら(実際に急用などの場合は別として)窓口で対面して「1人分はキャンセル」とは言いづらかったはずですが、ウェブなら体裁を気にする必要はありません。

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西鉄の東京―福岡線「はかた号」。予約しても決済・乗車がないことに対し、2023年に決済タイミングを改めるなどの対策を行った(画像:西日本鉄道)。

 すると、より重要となるのが「キャンセル料」の金額です。高速バスのほとんどの路線では100円(消費税率変更により現在は110円以内。以下同じ)と格安だったことで、直前キャンセルは経済的にもハードルが低かったのです。

 これは、高速バスが制度上は乗合バス(路線バス)であり、乗合バス用の標準運送約款(事業者と利用者の間の契約書のようなもの)において「普通乗車券の払戻し手数料」が「100円以内」とされてきたからです。高速バスのきっぷは、券面に便名や座席番号が記載されているにも関わらず、利用者が購入するのは「普通乗車券」、つまり鉄道でいう特急券を含まない「運賃」部分のみという扱いでした(ごく一部に例外あり)。そのため、キャンセル時に請求できるのは100円だったのです。

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